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経済産業省 「国は民間に口を挟まない」 デジタルコンテンツ分野で育成支援

2002/03/18 11:00

 経済産業省に文化情報関連産業課(メディアコンテンツ課)が設置されたのは、2001年1月6日の省庁再編時。国内のデジタルコンテンツ市場活性化の基盤作りに向け、(1)不正コピー問題への対処、(2)コンテンツ流通構造の見直し――を重点項目として、民間企業を支援する。ただ、同課岸本周平課長は、「コンテンツそのもののあり方、あるいはビジネスモデルなどに国が口を挟むわけにはいかない。日本の農業の現状を見ればわかるが、民間ビジネスに国が口を挟んで良い結果を導き出せたことはない」とし、あくまで国としては、基盤整備の支援に徹する構えを崩さない。

 同課ではこれまでアニメ産業研究会やコンテンツ流通促進研究会など、官民共同で様々な勉強会を開催。そのうえで、国内デジタルコンテンツ市場の大きな問題点として、前記の(1)および(2)を指摘。問題解決に向け動き始めた。

 不正コピー問題については、バーチャル、リアルの双方から検討している。

 バーチャル面では財団法人デジタルコンテンツ協会を通じ、コンテンツIDの技術検証を2月4日から1か月間実施した。コンテンツIDは、コンテンツIDフォーラム(安田浩会長=東京大学教授)がグローバルスタンダード化を目指し提唱する技術。権利情報や問い合わせ先が埋め込まれたIDを電子透かしでコンテンツに付与し、不正利用を牽制する仕組みだ。

 リアル面では、中国、韓国市場での国内コンテンツ海賊版の流通阻止を目的に、経産省と当該国の行政府(中国は文化部、韓国は文化観光部)との間で折衝を行う。

 コンテンツ流通問題について、岸本課長は「あくまで個別のケースだが、放送局や広告代理店の力が強く、プロダクションの力が著しく弱められる場合がある」とし、公正取引委員会を通じて適宜監視する体制を強める方針。また、公取委が実際に動かない場合、経産省が公取委に措置要求を行うことも辞さない構え。

 日本はブロードバンド環境の普及で韓国に及ばないが、BB網の普及もさることながら、キラーコンテンツの欠如が、普及遅滞の要因として指摘される。

 国の資金的な支援によって、プロダクションを「保護」することも必要との意見もあるが、岸本課長は「国がコンテンツそのものに金を出すことは逆に危険。ぬるま湯に浸かった企業が画期的なコンテンツを創造できるはずがない」と断言する。

 例えとして、1950年代の日本映画市場を引き合いに出し、「黒澤明や小津安二郎監督が国から支援を受けていただろうか。当時の日本映画界は黄金時代と呼ばれていたが、駄作も山のようにあったのも事実」と話す。

 重要なのは、駄作を恐れずに作品をつくり続けるプロダクションの底力であり、その中から傑作が生まれるのではないか、と指摘した。「日本はキャッチアップが得意な国であり、スタートは遅くても大丈夫だ」とも述べた。
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