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マイクロソフトを知らない? IT実践塾に参加する中小企業

2002/09/02 16:30

週刊BCN 2002年09月02日vol.955掲載

 

 「マイクロソフトがセミナーを開催すると聞いて、ビル・ゲイツがセミナーの講師として地方を回ると思っている人たちもいた」――。

 マイクロソフトが、昨年10月から始めたセミナー「IT実践塾」は、今年8月中旬までに開催回数105回、受講者数は5000人を越えた。

 中小企業の経営者をターゲットにしたこのセミナーは、ITを使いこなしていない企業に、経営にプラスになるITを導入してもらうことが狙い。従来のセミナーとは全く異なる内容、アプローチを行っている。

 「まず、マイクロソフトの製品説明を一切行わない。あくまで、ビジネスを変えるヒントになるような内容にする。用語もIT以外はカタカナ、専門用語を一切使わない」(ゼネラルビジネス統轄本部IT推進本部マーケティング部・川喜多一広シニアマーケティングスペシャリスト)

 専門用語の解説についても配慮している。例えば、「ファイルサーバー」といったIT業界で定着している用語についても、「パソコン同士をネットワークでつなげずに、フロッピーディスクでデータをやり取りしているユーザーもいる。業界での常識は通用しない」との視点で、あくまで一般ユーザーが理解できる解説にした。

 その成果が実り、これまでマイクロソフトと全く接点のなかった顧客が参加している。そこでマイクロソフトが直面したのが、「当社がどんな事業内容を行っているのか、全く知らない人が多いという事実」だったという。

 前述した、「ビル・ゲイツ自身がIT実践塾にやってくると勘違いをしている人もいた」という事実は、マイクロソフトに寄せられた1本の電話から発覚した。

 「日本人が、英語で当社に問い合わせしてきた。日本語でも大丈夫ですよとこちらで答えると、安心した様子。しかも『マイクロソフトがIT実践塾というのをやるようだが、その時はビル・ゲイツが話をするのか』と聞いてきた。どうやら、当社の日本法人はマンションの1室で米国スタッフが数人で運営する出先機関のようなものと思っていたようだ。ビル・ゲイツの名前は知っていても、マイクロソフトがどんな企業で、どんな活動をしているのか、全く認知されていない」(川喜多シニアマーケティングスペシャリスト)

 しかし、マイクロソフトの名前も知らないユーザーが存在するということは、「未開拓市場は確実にあることの裏返し。参加者は非常に熱心で、セミナーの途中で寝てしまう人もほとんどいない」という。

 各地域で中小企業ユーザーに製品を販売していくIT推進全国会のメンバーとして、200社が参加しているが、IT実践塾の有用性から、自分たちでIT実践塾を開催できるスキルをもった企業が誕生。セミナー内容に興味をもった参加者は必ず名刺交換を求めることから、「次のビジネスに結びつけていくことができるのでは」とマイクロソフトでは話している。
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