その初期には通信教育の延長に見られがちだったEラーニング。しかし開発が進んだ今、各種インフラと周辺技術の向上とも相まって、今や企業にとってなくてはならないものになってきた。そして今後は、取り残されてきた中小企業向けと一般教養分野での発展を見込み、各ベンダーがしのぎを削る。

 アメリカの大学では、毎年春先に卒業式が行われる。いずれも一大セレモニーになるのだが、その理由の1つとして、その学費の高さがある。多くの親たちにとってかなりの負担であり、ようやく卒業ということになれば、子供以上に感慨深いのだろう。

 これまでEラーニングは、ターゲットを企業の社員教育分野を中心としてきた。これはERP(基幹業務システム)などとリンクさせることによって、より統一的なシステム開発の受注が期待できるからである。

 多くのフランチャイズチェーンや大企業は、社員教育向けに積極的にEラーニングを取り入れている。例えば、新入社員がモニタを見ながらドーナツ作りを学ぶのは、既に見慣れた風景だ。

 しかし長引く米国経済の不景気は、Eラーニングに新たな展開をもたらしつつある。毎年多額の赤字に悩む各大学は、軒並み急激な学費の値上げを強いられている。アリゾナ州立大学では最大40%程の値上げを発表したほどだ。行政からの援助も減り、小子化傾向とも相まって、現在は大学経営は非常に厳しい。テロ事件後には学生ビザの取得が困難になり、海外からの裕福な留学生も減ってしまった。

 このような中、オラクルやドーセントといった大手が、パッケージ製品の販売やASP展開に注力するなど、新しい市場の開拓を急いでおり、予算や人手に悩む教育機関や中小企業でも、Eラーニングを導入しやすい環境が整いつつある。

 利益の確保に悩む大学にとっては、学費の低減やコスト削減が可能なばかりか、利益率も高く、かつ広いエリアから学生を募ることのできるオンライン講座は、今や非常に重要視されつつある。

 フェニックス大学(アリゾナ州フェニックス市)のオンライン講座を代行運営するアポロは、これら大学側の思惑とマッチし急成長を見せている。また、中小企業向けに独自のQ&A応答技術を売り物にしているアスク・ミーや、日本から資金導入を受けたVIDYAHなどが、ナレッジマネジメントシステムとの連携でシステムを幅広く提供している。

 近い将来、多くの中小企業も、教育機関同様、これらのシステムを有効利用できるようになると見られており、気鋭の新進企業の新規参入や大手の戦略の変更など、Eラーニング分野は新たな局面を向かえつつある。(田中秀憲)