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GIS学会 ビジネス分科会で事例を報告 FC出店や顧客サポートに威力

2003/11/03 19:37

週刊BCN 2003年11月03日vol.1013掲載

 GIS(地理情報システム)は、道路や水道、地勢情報など官公庁での利用が一般的だ。しかしその一方で、マーケティング活動に導入するなど民間利用も活発化している。地図情報と顧客情報を連携させ、地図上で顧客の分布を把握し新規開拓のターゲット地域を定めたり、出店計画の基礎データにするなど、地図情報の有効活用が進んできた。

 10月24日、東京・本郷(文京区)の東京大学で開かれたGIS学会ビジネス分科会第2回研究発表会では、地方での導入事例が紹介されるなど、GIS導入によるビジネススタイルの革新事例が紹介された。

 三重県四日市市のベンチャーのジオ・ワークは、三重県内でエステティックサロンのフランチャイズチェーン(FC)を運営するエルフィンクリエイティブの経営革新の一環として、新規出店ルール構築のためにGISを導入支援した。

 地域でのFC展開では、それぞれのFC店の商圏の把握や競合を避けることが重要になる。特にFC店のオーナーにとっては、営業テリトリーに同じFC店が出店した場合、競合による業績悪化を非常に懸念するという。そのためFCを運営する側は人口分布などを織り込んで出店計画を作らなければならない。新規出店ルールを作ることが目的だけに、「FC店のオーナーが見ても納得できるようなシステム作りをテーマにした」(ジオ・ワークの伊藤宏氏)と、GIS導入にあたって「わかりやすい判断材料」とすることに集中した。「FC本部にとっては、FC店のオーナーから信頼されることが重要。そのためには複雑な計算から導き出されるデータより、GISで見ればわかるようなシステムの方が効果的」(伊藤氏)というわけだ。

 また、函館市にある従業員6人の老舗宝石店でGISを導入したケースを紹介したのがエーソリューション。大手の宝石チェーンの出店で顧客が減少していたが、起死回生のためGISを顧客のケアに活用した。この事例では、500人弱の顧客の過去の購入状況や潜在的な購入額をデータベース化し、GISと連携させた。これまで「待ちの営業だけで、積極的な営業を行ってこなかった」(エーソリューションの浦宗一郎氏)という宝石店が積極的に顧客のケアを行う仕組みを作った。

 競合の激しいドラッグストア業界向けには、地域特性にあった出店を実現するために、POS(販売時点管理)データやキャンペーン状況などから調査した来店者の居住地のデータを地図上に展開し、商圏をはっきりさせたケースもある。

 この事例では、500メートルメッシュの地図を利用し、細かい顧客分布を表示したり、国勢調査のデータを地図にオーバーレイし購入層の状況を把握できる。

 これらにより顧客の少ない地域が明確になり、「その地域に対して新聞の折込チラシを配布したりビラ配りを計画するなど、地域の特性にあったセールスプロモーション活動の根拠がはっきりする」(ジェー・ピー・エスの佐内大氏)といったように、GIS導入により戦略的なマーケティングが可能になるという。

 自治体の電子化が進む中、統合GISをどのように市民サービスに生かすかが課題になっている。

 今回の事例のように、GISがミクロなビジネス領域でも活用されることで、経営改革の基礎データになるケースもある。ビジネスチャンス拡大にGIS導入は不可欠の要素になってきている。
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