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北京市政府 ソフト購入の顛末 国産ソフト保護の機運高まる

2004/12/20 21:17

週刊BCN 2004年12月20日vol.1069掲載

 北京市政府のソフトウェア買い付け騒動は、国内ソフトベンダーからの購入ということで、一応の決着となった。ことの発端は、11月17日前後から、北京市政府のソフトウェア買い付けはOSを中心にオフィスソフト、セキュリティソフトの大部分を米マイクロソフトが獲得するとの情報が流れ始めたこと。しかし相次ぐ批判に27日、北京市政府はこれを取り消した。今回の騒動から、中国市場の特殊性が見えてくる。

 北京市のソフトウェア買い付けは、OSについてはマイクロソフトからの購入を中心に予定されていた。中国国内のLinux系ベンダーに打診はなく、このためメディアや政府内部から、批判が相次ぐ事態となった。

 早速24日には、中国情報産業部などの政府機関トップをはじめ、国内ソフト企業の代表や専門家などが出席するシンポジウム「Linuxと政府買い付け」が開催され、情報産業部製品局の丁文武・副局長が、「今回の買い付け計画について調査を行い、国務院弁公庁などに報告する」と述べた。

 こうした動きを受けて26日、北京市政府は緊急内部会議で、国産ソフトの買い付け額をいくらか引き上げることを決定。翌27日には、オフィシャルサイトで、米マイクロソフトからのOS買い付け取り消しが通知された。

 結局12月2日に、金山軟件など中国オフィスソフトベンダー3社が契約に至ったことで、今回の一件は一段落した。

 ある業界関係者は、「今回の一件以来、各地の政府は、政府買い付けに国産ソフトを選択する傾向を強めている」と指摘する。しかし決定された政府買い付け項目については、ほとんどがその金額を公表していない。

 マイクロソフトからの買い付けを予定したために、非難の集中砲火を浴びた北京市を見て、立場上国産ソフトを擁護すべきである各市・省政府に萎縮感が漂っているといえる。

 ベンダー側の動きとしては、国産ソフトベンダー、中科紅旗の胡才勇・総経理が「揚帆国産ソフト連盟」の設立を前倒しし、12月にも実現する方針であることを発表した。また、オフィスソフトの国産標準規格制定の初稿も、2005年初頭に発表する方針であることも明らかにしている。

 「揚帆国産ソフト連盟」は、北京市が展開する「揚帆プロジェクト」の延長上に位置付けられている。北京市は02年7月に、「揚帆」、「起航」という2つのプロジェクトを立ち上げ、1年以内にウィンドウズ98レベルの「中国版OS」を開発するとしていた。

 胡総裁はすでに、国産Linux系OSはウィンドウズ98を超えたとの認識にあり、今回設立される「揚帆国産ソフト連盟」は、国内OSベンダーや半導体ベンダーなどが一丸となってソリューションを提供していくことを目指すものとなる。

 なお胡総裁は、北京市の政府買い付けとは無関係を主張しているが、国産オフィスソフトベンダーにとって今回の一件は、衝撃とともに危機感を煽るものであったとみられる。

 さらにこの北京市政府のマイクロソフト買い付け騒動の影響は、少なからず中央政府にまで及んだものとみられる。現在、中国財政部と中国情報産業部が海外メーカー製ソフトの政府買い付けを制限する方針であると伝えられている。

 今回の北京市政府の動きは、中央政府を中心にLinuxという「中国独自のソフト産業」構築を目指している現状に、逆行するものであったといえる。

 その広げた波紋の大きさは、中国における国産ソフト擁護政策の不徹底ぶりを露呈したものと見ることができよう。(サーチナ・中村彩)
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