2004年12月、中国最大手パソコンメーカーの聯想集団(レノボグループ)が米IBMのパソコン部門を買収した。聯想集団を世界第3位のパソコンメーカーに押し上げたこの買収は、図らずも中国パソコン業界の値下げ競争に拍車をかける形になった。

 聯想集団が12億5000万ドルで米IBMのパソコン部門買収を発表した翌日、ヒューレット・パッカード(HP)は、十数種類の家庭向けパソコンを4000元からという価格で中国市場で発売開始した。さらに米AMD(アドバンスト・マイクロ・デバイス)の部品を使用した新製品の家庭向けパソコンは5399元。液晶モニタ付パソコンも大幅に値下げしているほか、最新式のデスクトップパソコンも3999元という価格になった。

 そこには、聯想集団が“新生聯想”の足場固めを行っている間に、市場を奪取しようというHPの意図があるとみられる。外資系企業として中国で低価格パソコンを発売するのは、HPが初めてである。

 聯想集団は、今回の買収を嫌うIBM人材の流出リスクにさらされるとみられている。IBMに忠実な消費者が離れていく可能性も指摘されている。また、うがった見方をすれば、聯想集団は買収によってIBMの債務5億ドルを“購入”したことにもなる。加えて米国では、聯想集団の知名度は低い。不利な状況が揃い、「新生聯想」は前途多難だ。

 HPが値下げを実施すると、今度は方正(ファウンダー)や華碩などの中国国内メーカーもノートパソコンの大幅値下げを行った。神舟電脳も4999元の超低価格ノートパソコンを発売。販売店サイドは、この勢いに海外メーカーは追いつけないとみている。しかもまるで駄目押しのように、新藍電脳も3999元という破格の値段でノートパソコンを発売した。

 パソコン低価格化の動きは、HP以外の海外メーカーにも現われている。デルも低価格ノートパソコンを投入する方針と伝えられている。価格は、聯想マシンの6999元を下回るとの情報もある。発売は今年1月の予定だ。

 HPやデルの価格戦略の背景には、インテルの存在があるとされる。HPの関係者は、値下げ戦略に対するインテルからの資金的サポートが強化されていることを明かした。神舟電脳の4999元パソコンにもインテル製のチップが使用されている。

 聯想集団は、IBMのパソコン部門を買収することによって、インテルなどの上流メーカーとの価格交渉権を得たはずだった。しかし、インテルの一連の動きからは、同社が聯想集団を全く相手にしていないことがうかがえる。

 中国では、04年夏に聯想集団が最低価格2999元のパソコンを発売してから、値下げ競争が本格化し、すでに半年以上続いている。メーカー側はシェアを狙い、いたちごっこのように値下げを行う。一方消費者の間には、さらなる値下げを期待して買い控えが起こり始めているともされている。

 1月末から2月上旬まで、中国では旧正月の連休を狙った商戦が繰り広げられる。この期間にノートパソコンがどれくらい売れるのか、低価格に歯止めがかかるのか、注目が集まる。

 振り返ってみると、一連の中国パソコン低価格競争は聯想集団が火をつけ、「新生聯想」の誕生が拍車をかけたともいえる。中国のパソコン市場にとって、聯想集団はそれだけ大きな存在なのである。

 聯想集団の2004年度第3四半期(7-9月)における中国国内市場でのシェアは27%。日本を除くアジア・太平洋地域におけるシェアは13.1%である。(サーチナ・中村彩)