【上海発】中国の学術研究専用ネットワークで、IPv6を採用した次世代インターネットが稼働し始めた。現段階で世界最大のIPv6網になるという。日本では遅々として進まないIPv6普及だが、中国はIPv6網で要となるIPv6ルータに国産品を採用、次世代インターネットで技術的なアドバンテージを手に入れようとしている。

 2004年12月末、中国の学術研究専用ネットワーク「中国教育和科研計算机網(CERNET)」の設立10周年記念大会で、国家発展改革委員は、IPv6を全面採用した「CERNET2」の正式稼働を発表した。

 CERNET2は、中国の次世代インターネットで最もコアとなる基幹網と目される。20都市にわたる数百の大学や研究機関に対し、最大10Gbpsの通信速度でIPv6によるインターネット接続を提供する。

 周知の通り、IPv6網では付与できるIPアドレスの数が既存のIPv4網に比べて飛躍的に増え(2の128乗倍)、通信速度や安全性も高まる。インターネットのさらなる高度利用が実現すると見られる。

 中国側は、CERNET2が「現時点で世界最大の純IPv6網」と自信を見せている。報道機関も「TCP/IPの生みの親、米国のロバート・カーン博士が、『米国は次世代インターネットの開発が遅れている。中国に追いつくべき』と語った」と紹介するなど、中国は今、CERNET2稼働に沸き立っている。

 中国が自信を見せているのは、CERNET2のコア技術となるIPv6対応ルータが、清華大学コンピュータ学部と同学部傘下のITベンチャー「清華紫光比威公司」が開発した“国産品”だからでもある。同製品は、情報産業部から「04年・情報産業重大技術発明」として認定された5件の技術開発案件の1つである。

 CERNET2の構築を指揮した呉建平・清華大学教授は、「CERNET2で採用したルータの50%以上は国産品。これは、中国が次世代インターネットのコア技術を獲得する上で大きな進展」と語っている。

 中国最大の通信事業者、中国通信の関係者は、「IPv4では、中国の通信会社は米国のシスコシステムズやジュニパーネットワークスから大量の通信機器を調達しているが、CERNET2が成功すれば、IPv6では、中国メーカーがある程度市場を押さえられる」と期待する。

 中国は2220万回線と世界第2位のブロードバンド利用者を抱え、1位の米国を抜くのも時間の問題(英ポイント・トピック調査、04年第3四半期段階)。この夏からは第3世代携帯電話サービスも始まり、現時点でも約3億人の携帯電話ユーザーが高度利用にシフトする。

 そのため、IPアドレスの枯渇が現実的な問題であり、日本以上に速いスピードでIPv6網が商用ベースで普及する可能性もある。その時、IPv6のコア技術を押さえているかどうかは産業政策上、大きな問題になる。

 「韓国が国を挙げてブロードバンドで先行したように、中国は国を挙げて次世代インターネットに力を入れていくはず」(関係者)と、CERNET2の稼働により、中国通信などでは商用ベースでもIPv6シフトに向けた動きが活発になるだろう。「北京五輪までに『IPv6カー』を登場させる」など、IPv6を活用した様々な構想が登場している。

 それに対し日本では、いち早く01年4月にNTTコミュニケーションズ(NTT Com)が国内初のIPv6対応の商用インターネット接続サービスを始めているが、IPv6は今一つ盛り上がっていない。総務省が「u-Japan」構想でIPv6シフトを打ち出し、デジタル家電を中心にしたホームネットワークがもてはやされているが、まだ大きな推進力とはなっていない。

 IPv6を採用した次世代インターネットでは、日本は中国よりも出遅れる可能性さえある。
坂口正憲(ジャーナリスト)