【上海発】中国インターネットポータルサイト「tom.com」の報道によると、デルの中国法人であるデル・チャイナ社のCEO符標榜氏が10月25日に定年退職したと報じた。今年1月から符氏と共同CEOを担当している麦大偉氏が符氏の業務を引き継ぎ、引き続き中国と香港の業務をリードしていく。

 デルは符氏の実績を高く評価していたといわれる。2001年に入社して以来、デル・チャイナはシェア、販売、利益などの面で大きな成長を達成したという。この間の売り上げは大幅増の3倍に達し、現在、およそ10%を占めるマーケットシェアから見ても、中国で第3位のコンピュータメーカーだ。デルにとって中国は、米国に次いで最も重要な「戦略市場」になっている。

 にもかかわらず、これまでメディアで噂されていたCEOの交代だけでなく、同時にデル・チャイナが100─150人をリストラするという説もささやかれている。符氏の退職はデル・チャイナの最近の実績に関係があるのではないかと考えられているからだ。同社の経営陣はこれまでも頻繁に交代を繰り返してきた。符氏は03年10月にCEOに任命されてから最も任期の長いCEOだった。

 噂はこれのみにとどまらず、世界で一貫している直販戦略を変更して、国内ではチャネル販売に移行するかもしれないという。直販体制を誇っているデルにとっては不可解な挑戦のようだが、デルと協力してきているシステムインテグレータが正式な代理店になる可能性が高い。

 では、デルはなぜ、今まで不敗ともいえる直販体制の変更を計画しているのか。

 中国の「21世紀経済報道」紙の記者は上海での市場実態から、裏では既に代理店販売が許されているのではないかとの疑問を提示した。

 上海市の商店街「徐家匯」にある「太平洋デジタル広場」と「百脳匯電脳広場」内のフロアには、デルのノートブックを販売しているブースがある。それらのなかには小さなディストリビュータだけでなく、有名な大手ハードウェアディストリビュータも見かけられる。これらの代理店は大規模取引先という「特権」を活用して、デルから安くパソコンを購入し、店頭で小売しているという。

 デルのノートパソコン「Latitude C640」(P4─1.8G/256M/30G/14.1XGA/8XDVD/56K/100M/32M)を例に見比べてみよう。デルのウェブでの公式価格は12,526元(約18万円)だが、店頭では、1社は12,888元の表示価格を掲げている一方で、別の1社は11,000万元で販売している。アフターサービスは、デルがパソコンに付けているバーコードによってサポートを提供している。

 実は、デルが中国ではチャネルを通して製品を流通していることは、業界ではすでに公然の秘密となっている。たとえば、代理店向けの専門雑誌「立特商情」にもすでにデルの広告が掲載されている。チャネル販売の対象となっているのは、大中型企業向けのデスクトップとノートパソコンで、「B2B2B」がそのモデルだ。

 つまり、ディストリビュータはより低価格でデルに注文したパソコンを個別の取引先に販売し、そのマージンを自分の利益としているのだ。デルがこのやり方を黙認している理由は、ディストリビュータは顧客情報を掌握しており商売がしやすいこと卸売はデルにとっても魅力がある──この2点だろうと推測されている。

 デルは、ビジネス用パソコンの場合、ウェブで公式価格を公表しておらず、専門の販売員が値段の交渉も含めて対応する。台数が多ければ多いほど安くなるのは当然で、利益に敏感なディストリビュータはこれを利用してさらに契約条件を変えてもらい、多めに購入したパソコンを店舗に置いて小売販売を始めたというわけだ。

 中国大都市ではHP、デルなど国際的なブランドはよく知られているが、小さな都市ではローカルブランドしか売れない。高額商品を買う場合、やはり店舗で買い求めるのが、一般的な中国人の習慣でもある。最近、売り上げ目標を800億ドルに設定したデルは成長率が減りつつある。一方、国内市場は競争が激しい。国際化したレノボのほか、価格競争戦略が得意なローカルメーカーは数多い。大手・中小まじえた群雄割拠の状況に直面して、デルの新たな成長は困難な状況にあると思える。

 「直販か代理店販売か」という疑問に対するデルの曖昧な態度について、ある元デル社員はこう語った。「デルは直販の代名詞だ。代理店販売は社内でずっとタブーだった。ただ、実際には営業は業績アップのプレッシャーに直面しているので、代理店体制によってしか、この特別な市場には柔軟に対応できない」
魏鋒(ウェイ・フェン=ACCS上海事務所担当、shanghai@accsjp.or.jp)