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東芝ソリューション府中エンジニアリングセンター モノづくりのノウハウをSIに 製品開発の技術をサポートに活用 売上高の3%を開発投資にあてる

2006/06/19 17:54

週刊BCN 2006年06月19日vol.1142掲載

 従業員2000人を擁する東芝ソリューション・府中エンジニアリングセンターは、モノづくりとともに検証・サポートも行っている。メーカーとしての開発技術力をソリューションに生かす稀有な存在だ。その内側をのぞいてみた。

 東芝ソリューション(梶川茂司社長)の府中エンジニアリングセンター(東京都府中市)は、開発・設計、品質管理、プラットフォーム構築などの物づくりのほか、システム検証、サポートを行っている。同センターにはサポート専門の子会社も同居しており、約2000人の従業員で運営されている。

 東芝ソリューションでは、コア技術を育てるために「売上高の3%を開発投資にあてる」(清野和司・府中エンジニアリングセンター長)方針を採っている。かつて東芝がメインフレームをつくっていたノウハウを、同社がSIに生かしているわけだ。ソラリスやオラクルなどオープンプラットフォームの深い専門知識や、マルチプラットフォームへの対応が強み。「物づくりをするメーカーとSIerの立場を併せ持つ、メーカー的ソリューションベンダー」と、自らを位置づけている。

 「製品開発で培った技術を元にしたサポートと、迅速な問題解決に反映する体制」を構築している。また、これらを強みにした診断、予防保守も競争力の源泉になっているという。予防保守では、「システムが止まらないようにするための顧客の期待値が高い」と万全の体制で臨む。

 つまり、東芝ソリューションのコアコンピタンスは、アフター(保守・サポート)をビフォアにつなげる循環系である。それを実現するため、アフターである保守・サポートについては、アプリケーション技術者、プラットフォーム技術者など総勢500人がシステムを一括サポートしているほか、同センターと全国86か所のITサービスの保守網を持っている。

 同センター内にあるコールセンターは、ローテーションの仕方、マネジメント体制などの細かいノウハウと、個人のスキルを最大限に生かした仕組みで運営される。社員それぞれが持つナレッジを共有するために、社内での人材を流通させている。このような取り組みによるコア技術の蓄積で、ベンダー製品や、自社で開発していない新製品についても「ベンダーよりも詳しい」(濱崎勝久・プラットフォームソリューション事業部・プラットフォーム運用設計部・プラットフォーム運用設計第一担当グループ長)という評価を顧客から得ているという。

 検証センターでは、顧客と共同でシステム検証を行っている。メインのハイエンド系サーバーや、プリンタも含めた検証も行う。SIerは、「一般的には、ハードウェアの検証は行わないケースが多い」(濱崎グループ長)が、同社では、「サポートと設計の担当者による基盤を含めた検証」が、競合他社との差別化ポイントとしている。

 マルチプラットフォーム技術、自社製品、世界的なベンダーとのアライアンス製品、保守・運用まで、ワンストップソリューションを展開するなかで、「対応できないことは何もない。各種製品を組み合わせ、運用、保守を行うことが信頼につながっている」(清野センター長)という。自らの技術への誇りが同センターを支えている。
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