M&Aの連鎖に錯綜する思惑

 【上海発】8月に相次ぐ買収劇が表面化した。レノボグループは欧州のPCメーカー、パッカードベルの買収を決議し筆頭株主である許立信氏と覚書を交わしたと発表。一方、そのパッカードベル買収に早くから意欲を示してきたエイサーは、総額7.1億ドルを投じて米国第4位のPCメーカー、ゲートウェイを傘下に収めた。ゲートウェイの帰属は明らかだが、パッカードベルはレノボ、エイサーのどちらの傘下に組み込まれるのかは、現段階では確定していない。局面は錯綜してきた。

 パッカードベルは1930年に設立、86年にPCの生産を開始した。95年にはNECの子会社となり、昨年、華僑の許立信氏に買収された。エイサー、HPに次ぐ欧州第3位のメーカーで、西ヨーロッパでの台数シェアは約3%、前年の出荷台数は83万台、売上高は20.6億ドルだったといわれている。世界市場でみればメジャーとはいえないが、欧州市場では一定のブランド力を持つ。

 一方、買収に向けて覚書を交わしたレノボは、IBMのPC部門を合併したとはいえ欧州での実績はまだまだ低い。このため自社ブランドによる展開よりも、地元ブランドを買収した方が手っ取り早いとITアナリストは評論していた。

 実は、パッカードベル買収にはレノボ以外に、早くからエイサーの影が見え隠れしていた。エイサーは今年4月、年内にも「某PCメーカーを買収する可能性がある」ことを発表した。このメーカーがパッカードベルではないかと市場関係者は推測、エイサーによるパッカードベルへのアプローチは、レノボより先に始まっていたともいわれていた。しかし、筆頭株主の許立信氏は、パッカードベルをレノボグループに売却する意志を示唆していた。

 この覚書は、エイサーにとって心痛いニュースに違いないが、エイサーは8月27日に突然ゲートウェイ買収を発表した。この買収でエイサーは年商150億ドル超、PC出荷台数は2万台になる見込みで、一挙にレノボを抜いて世界市場で3位のメーカーに上り詰めることになる。

 こういったM&Aの連鎖のなかで、現在明らかになっている点は、エイサーに買収されたゲートウェイの帰属は明確だが、パッカードベルはレノボ、エイサーのどちらの傘下に入るのか、いまだ確定していないことだ。

 密かにささやかれている噂がある。それは、レノボが香港に進出した当時、許立信氏から大変な便宜を受けたという説だ。その許氏が、実績が落ち込んでいるパッカードベルを売却しようとしている現在、レノボは許氏に対する「恩返し」として、手を出さないわけにはいかない、ともいわれている。

 しかし、エイサーが最初にパッカードベルに着目し、買収交渉がかなり進んでいたのは間違いない。価格交渉の最中に、レノボがいきなり割り込んで覚書を結んだことは何を意味するのだろうか。レノボは本気でパッカードベルを手に入れる気があるのか、それとも、エイサーとの交渉の切り札として、許氏に利用されているだけなのか。局面は錯綜している。
 魏鋒(ウェイ・フェン=ACCS上海事務所所長、shanghai@accsjp.or.jp)