【上海発】9月24日、デル(中国)が北京で記者発表会を開き、大手家電ディストリビュータ・国美電器と提携し、コンシューマデジタル製品の小売市場に進出することを発表した。これは、デルの全世界における販売ポリシー改革の一環とみられ、1998年に中国に進出して以来初めて、直販システム以外の新しい販売パターンを取り込むことになる。

 デルの計画によると、今年10月の50店舗を皮切りに、数か月間で700店舗の国美電器でのPC販売を見込んでおり、同社スタッフも店舗に派遣される予定だ。デルは、中国のみならず日本、英国、米国でそれぞれ現地の家電量販店と協力契約を結び、ビックカメラ(日)、Carphone Warehouse(英)、Wal mart(米)でPCを販売する。また、ロシア・モスクワでは、デルパテントショップの開設も企画されているという。

 PCの直販で成功を収めたデルは、10年間をかけて直販の利点を中国の消費者にアピールし続けてきたが、なかなか受け入れられず、マーケットシェアは2.5%にとどまる。

 中国のPC市場は、米国に次ぐ2番目の規模であり、Gartnerのデータによると、今年のPC出荷数は3300万台、伸び率は17%前後と好調だ。デルが従来の販売ポリシーを改革してまで、シェア獲得にこだわる理由はここにある。

 デルの新しい売り方は、中国における「直販」を否定することと同義かもしれない。中国の消費者は、ネット販売や携帯電話通販に慣れていない。セキュリティの問題以外にも、PCを使いこなせないことや、ソフトウェアシステムができていないことなども、要因としてあげられる。さらに、文化の違いもある。米国人にとっては、ネットで商品を直接入手できるのは、「店にでかける手間が省ける」という認識かもしれない。だが、中国人にとって買い物は、ひとつの楽しみとされている。さらに、支払いの問題や、すぐその場で商品が入手できないことも、ネガティブに捉えられる要素だろう。

 とはいえ、直販の依存度を下げて量販店市場に踏み出すことは、デルの業績向上のためには必ずしも得策とはいえない。なぜなら、中国では、直販、量販店のほかに「電脳城」「数碼(デジタル)広場」などの存在が無視できないからである。「電脳城」「数碼広場」と呼ばれるテナントビルには、PC、部品、デジタル製品などを扱う小売店のさまざまなブース・店舗が、ひしめき合って集まっている。直に商品を見ながら質問し、比較して値段を交渉することは中国人にとっての楽しみの一つであり、中国ではPCの8割以上が、電脳城のようなルートを通じて売られている。 デルは「中国の消費者は、今後は国美電器のような店でPCを買うようになる」と見込み、今回の施策を打ち出したのだろう。確かに、以前は電脳城の店舗による出荷がメインであった携帯電話は、現在、量販店での販売が主力となってきている。そして国美電器は、すでにシェア30%の実績をあげている。かつて二度もPC市場から撤退したハイアール電脳は、05年に「復帰」すると、販売の切り口を量販店に見いだして実績を伸ばし、今やトップ5に仲間入りした。ハイアール電脳の成功が、デルの新施策の刺激にもなったのだろう。PC家電化のトレンドから判断すれば、量販店はこれから、PCメーカー間の競争の主戦場になるのかもしれない。
 魏鋒(ウェイ・フェン=ACCS上海事務所所長、shanghai@accsjp.or.jp)