KDDI(小野寺正社長)が海外事業の拡大に注力している。このほどロシア拠点を増やしたほか、来年1月には欧州地域のデータセンター(DC)増床などを進める。顧客にあたる日系企業の海外進出が一段と活発化しており、それを通信回線の面からサポートすることが狙い。加えて、海外通信事業者との競争激化に備えるためとみられる。

 同社が事業拡大に向けて力を注ぐ地域は東欧とロシア。ロシアでは個人消費や設備投資などが活発化し、東欧では生産が増加しているといった事情だけでなく、「日本企業がポテンシャルマーケットとして進出対象と捉えている」(石川雄三・執行役員ICT事業本部長)のが注力する理由だ。

 そこで、このほどモスクワ市に支店を開設。5人程度のスタッフを配置し、回線サービス提供を中心に日系企業のロシア進出をサポートしている。すでに設置しているサンクトペテルブルク支店や、ロシア通信事業者との合弁会社であるボストークテレコムとの連携などを活用してロシア全土を迅速にサービスできる体制を整備する。

 欧州地域では、今年9月からネットワーク拡充に向けて「RJCN」と呼ばれる欧州とアジアを最短ルートで結んだケーブルを提供開始する。同ケーブルにより、10Gレベルの大容量通信や伝送200msec以下の遅延低減を追求。顧客企業がリアルタイムに双方向通信できる環境を整える。地域内のネットワーク整備については、欧州に適したIP-VPNやイーサネットスイッチの提供を10月から開始。サポート面では、日本と英国にあるオペレーションセンターで二重監視を行う。来年1月には、英国と仏国のDCを現状の1.6倍に増床。これにより、DCをベースとしたICTサービスの提供拡大を視野に入れる。

 海外の通信事業者が本国以外の地域でビジネスを手がける際、顧客に対して回線サービスだけでなく新オフィスのネットワークインフラ構築からアプリケーション配信までと、コンピュータ側のサービスまでを網羅することが一般的となりつつある。日本に進出している海外通信事業者も多く、グローバル化を目指す日系企業を顧客として着実に獲得している状況。通信事業者によるグローバル化が進んでいることから、KDDIでも海外市場での事業拡大に乗り出した。石川本部長は、「海外事業の売上高を現状の1000億円規模から、12年度(13年3月期)に2000億円まで引き上げる」と鼻息を荒くする。

 また、国内市場をみるとNTTグループがNGN(次世代ネットワーク網)を最大限に活用した新しいビジネスモデルを模索するなど、回線を保有する通信事業者がSaaSなどアプリケーションを含めたICTサービスで強い存在感を示そうとしている。KDDIでもSaaS事業への着手を表明しているものの、具体的ソリューションが出てきていないのが実状。グローバル化を図る日系企業の各ユーザーに対して、アプリケーションサービスまでを網羅したネットワークビジネスでソリューション案件を増やすことも狙いといえそうだ。「ICTソリューション事業については、経常利益率10%を目指す」としている。