アドビシステムズ(ギャレット・イルグ社長)は、企業向けプラットフォームビジネスへの攻勢を強める。大手SIerを巻き込んで、業務システムのユーザーインタフェース(UI)のプラットフォーム領域への進出を本格化させる。従来のクライアント/サーバー(C/S)型やウェブブラウザのUIに代わるフロントエンドシステムにおけるデファクトスタンダードを狙う。

 C/S型の操作性の良さと、ウェブ型の利便性を両立させたUIが、次世代の「RIA(リッチインターネットアプリケーション)」である。今後、企業の業務システムの一部は、RIAベースのフロントエンドへ移行するとみられており、そのプラットフォームを巡るベンダー間のシェア争いが激しさを増す。アドビは今年6月にRIAの実行基盤「AIR(エアー)」日本語版を投入し、本格的なビジネスを始めた。

 SIerのNECシステムテクノロジーは、AIR上で動作するアプリケーション開発支援ツールを今年9月末までに出荷すると発表。開発者向けにツールを販売するとともに、自らRIAベースのフロントエンドシステムの構築を積極的に手がける。これにより向こう3年間で累計20億円の売り上げを見込む。

 アドビのイルグ社長は、「すでに大手SIerの何社かが、AIRビジネスに強くコミットしてくれている」と、RIA事業の拡大を進めるSIerとの連携を加速させる。ERP(統合基幹業務システム)のSAPのフロントエンドシステムにAIRを採用する事例や、オフィス通販大手のアスクルが採用するなどの動きもある。アドビではビジネスパートナーとの結びつきを強めて、RIA市場でのシェア伸長に力を入れる構えだ。

 今年度上期(07年12月-08年5月)のグローバルにおける企業向けビジネスの売上高構成比は、昨年度通期とほぼ同じ約6%と、全体からみるとまだ小さい。依然としてPhotoshopやFlashをはじめとするクリエイション分野でのパッケージ販売がビジネスの中心を占める。米本社では、RIAや文書管理など企業向けビジネスの拡大を重点事項に掲げており、国内でも「大きなミッションの一つ」(イルグ社長)と位置づける。

 AIRは、FlashやPDFなどアドビ独自の技術にHTML、Ajaxなど汎用技術を組み合わせたもの。今後さらに拡大が見込まれるRIAのプラットフォームとしてシェアが獲れれば、関連する開発ツールの販売増や、従来からの強みであるクリエイション分野の技術的応用によってビジネスを有利に展開できる道が開ける。また、パソコンだけでなく、携帯電話や情報端末などさまざまなデバイスにもRIAビジネスを拡大させることでユビキタス性を向上。売上増につなげる。