安川電機グループのワイ・イー・データ(濱田兼幸社長)は、ハードディスクドライブ(HDD)など外部記憶装置のデータ復旧サービスをテコ入れする。大手SIerとの関係を強化すると同時に、監査・捜査機関などからの証拠保全「デジタル・フォレンジックス」需要にも積極的に取り組む。直近では苦戦気味のデータ復旧サービスだが、内部統制の強化や情報セキュリティ、コンプライアンスへの要求が高まるにつれて、再び脚光を浴びつつある。

 HDDの多重化によるバックアップ機能の向上や、データセンター(DC)に情報システムが移管されるケースが増えるなか、データ復旧サービス需要は伸び悩み傾向にあった。だが、ここへきて情報システムのリスク管理や内部統制、コンプライアンスの要求によって、データ復旧サービスへの需要が再び高まる兆しが出てきている。

 バックアップ機能が向上しても、完全ではない。RAID機構で二重化していても、データが破損することはあり得る。これはDC内でも同様で、多くのSIerや顧客企業は、「万が一のときの対策がまだ十分とはいえない」(濱田社長)状態だと、同社では分析する。

 SIerのなかには、“当社は万全のバックアップ体制だと顧客の前で謳っているのに、データ復旧サービスを自らのサービスメニューに入れられない”という声も聞かれる。何でも突き破れる矛と、何でも跳ね返す盾は同時に存在し得ない、という理由からだ。

 しかし、そもそも情報の保全に“万全”はあり得ないわけで、「万が一の事故が発生したときの“最後の砦”となるのが、データ復旧サービス」(オントラック事業部技術部の尾形光弘・グループ長)と訴える。現在は大手SIerのうち頻繁に取引があるのは1-2割程度。データ復旧の必要性を伝え切れていないSIerも多くあると見られ、取引拡大の余地は依然大きいとみる。

 さらに、近年ではHDDの情報を故意に消去したり、破損させたりしたケースでの復旧依頼も増える傾向にある。主に監査や捜査機関が消去されたHDDの情報を復元し、捜査での活用や裁判での証拠として保全するときに用いられている。こうしたデジタル技術を駆使した証拠保全は、「デジタル・フォレンジックス」と呼ばれ、内部統制やコンプライアンスに重要な役割を果たす。

 昨年度(2008年3月期)のデータ復旧サービス事業の売上高は前年度比18.8%減の7億7500万円だったが、今年度は前年度並みをほぼ維持できる見通し。今後は、SIerなどとの関係をより強化し、デジタル・フォレンジックス事業も伸ばす。また、HDDだけでなくDVDやCD、フラッシュメモリのデータ復旧サービスにも力を入れる。こうした取り組みにより、向こう1-2年のうちに同事業の売上高を10億円程度に拡大させる。