米マカフィーが2007年11月に約3億5000万ドル(371億円)で買収した暗号化ソフト開発大手のセーフブート。この買収により、マカフィーは機密情報漏えい防止などのデータ保護関連(DLP)ソリューション群を一気に拡大させた。9月上旬、セーフブートの前CEOで現在は米マカフィーのシニアバイスプレジデントを務めるゲイハルト・ワツィンガー氏が来日。同氏に、マカフィーとの統合を選んだ理由や、暗号化ソフトなどデータ保護ソリューションの展望について聞いた。

 ――暗号化ソフトの有力ベンダーとして、その地位は確立しているように思えたが、なぜマカフィーとの事業統合を選んだのか。

 答えは極めてシンプル。有力なセキュリティベンダーと統合することで、急拡大する需要に迅速に応えようとしたのだ。

 セーフブートは、単独の企業として着実に成長していた。だが、それ以上に暗号化ソフトを中心としたデータ保護ソリューションの市場が拡大している。セーフブートは企業規模が小さく、ユーザー企業の需要に応えられるだけのキャパシティがなかった。単独で事業展開していれば、ビジネス機会を逃し競合他社に負けていただろう。

 ――ユーザー企業の機密情報漏えいに対する意識、対策状況をどう捉えているか。

 2000年からデータ漏えいによる被害が顕在化していたが、USBメモリの普及がそれを一気に後押しした。USBメモリによる情報漏えいが頻繁に起きており、ユーザー企業のデータ保護に対する意識が世界各国共通に高まり続けている。各国の政府は、日本の「個人情報保護法」に匹敵する法律を定めており、現在世界には、個人情報保護に関連する法律が250種類以上ある。法律への対応という意味でも、企業のデータ保護ソリューションへの関心は高まっている。

 ただ、対策はあまり進んでいない。ユーザー企業のセキュリティ対策は以前、ウイルスやスパムなどの外部からの侵入を防ぐことが中心。内部にある情報の流出を防止するソリューション・ツールを導入するケースが世界的に見て極めて少ない。

 ――日本のデータ保護、とくに暗号化ツールの導入状況は。

 セーフブートとして事業展開していた頃、各国別の売り上げで日本は圧倒的な数字で、03年時点では全売上高の約80%は日本市場で占めるほどだった。日本には現在約1700社の顧客がいる。日本は個人情報保護関連の法律整備が他国よりも早くて、その分市場が立ち上がるのも早かった。

 ――マカフィーとしてのデータ保護ソリューションの今後は。

 現在、米マカフィーの全売上高のうち旧セーフブート製品を中心としたデータ保護ソリューションが10%を占めている。今後どの程度伸びるかは未知数だが、現在のところ米国では50%増、欧州では30-40%増、日本は20-25%増で伸びている。強い需要を取り逃がすことがないように地道に拡販する。

 また、企業買収による技術・製品の充実も継続する。焦点は「フォレンジック」。データを作成してから削除するまでのライフサイクル全般を追跡できるようにするのがデータ保護の理想。今年8月にリコネクスを4600万ドル(48億7600万円)で買収してソリューションの厚みを持たせることができたが、今後必要を感じたらフォレンジック関連企業を買収するつもりだ。