OSSが抱える課題にも立ち向かう

 富士ソフトを中心とした非営利団体「Linuxコンソーシアム」は10年の節目を迎え、有志メンバーによりLinux含めOSS全体のビジネスを志向する新団体「OSSコンソーシアム」として7月29日より本格的な活動を開始する。OSS市場の活性化に向けた課題の解決やメリットの啓蒙、会員間の協力による効率的なアウトプットを行うことを心がけるとともに、エンドユーザーが参画できるような環境整備を目指すという。

 Linuxコンソーシアムは1999年に、(1)Linuxの企業への積極的な普及啓蒙活動(2)Linuxアプリケーションの普及促進(3)Linuxの利用によるパーソナルコンピュータ・関連機器等の普及促進(4)Linuxに関する国内・海外の情報交換──などを活動趣旨として設立された。10年間、精力的な活動を続けてきたが、経済情勢の悪化に伴い、法人会員の退会が相次いだ。「解散することを運営会議で話し合っていたが、『もっとビジネス寄りの活動をしたい』という意見が相次いだことから、LinuxコンソーシアムからOSSコンソーシアムへの発展的解消とした」と、旧Linuxコンソーシアム会長で現OSSコンソーシアム発起人代表の渡辺剛喜氏(現・富士ソフト顧問・サイバーコム副社長)は説明する。

 Linuxコンソーシアムは非営利団体のため、これまで会員の間ではビジネスの話は一切もち出さなかったが、今後は各社の共同運営により会員同士の交流、マッチングなど、ビジネス拡大のための施策を積極的に打っていく。

 旧Linuxコンソーシアムではセキュリティ部会、組込み部会、リッチクライアント部会など、いくつか部会を立ち上げていたが、体制移行に伴い、リッチクライアント部会を廃止。セキュリティ部会、組込み部会、ソリューションビジネス部会、CMSビジネス部会、ビジネスアプリケーション部会の五つで活動を展開する予定だ。「基本的には会員がやりたいことをやるような活動にしたい。手弁当ではなく、ビジネス拡大に力を入れる。活動のなかで、案件が取れることもあるかもしれない」(渡辺代表)という。

 ビジネス拡大策は、「検討中だが、例えば運営事務局主体、もしくは部会ごとにセミナーを開いて『こんなビジネスがある』と紹介していきたい」と話す。また、組込み部会については「グーグルのAndroid(アンドロイド)に注目している。携帯電話メーカーが携帯のOSへの活用を視野に入れていたり、また情報家電分野のプラットフォームとして採用しようとする動きが強まっている」(渡辺代表)と状況を語る。

 コスト削減の波が業界を覆うなか、開発の発注額が小さくなっている。そこで開発者は、以前はすべて手組みで行っていたものを、省力化・効率化するため、まずOSSの開発ツールを探す傾向がある。ユーザー企業にも、低コストで効率が上がるソフトとして注目されている。また、ソフトウェアベンダーが社内だけで使っていた開発ツールを公開したり、ベンチャー企業でも自社開発のソフトをOSS化する動きがある。

 一方で、以前からいわれていた、保証の問題やサポート費用が高額であること、サポート期間や複雑なライセンスがほとんど英語であることがネックとなって、国内でのビジネスが成立していない面も見受けられる。海外でもOSSのライセンス違反による訴訟問題が増えている。「こうした問題については、部会で話し合いを進めながら、解決策を探りたい」(渡辺代表)としている。またライセンスについて、コンソーシアム発起人の一人の吉政忠志氏は「個人的に考えていることだが、日本語のライセンスを作りたい。企業はOSSの機能を安心して使いたいと考えている。信頼できるものを提供し、コンソーシアム内で技術的ノウハウを共有したい」と話す。

 正式な会員勧誘などは7月29日の総会後から開始する。Linuxコンソーシアムの人脈を生かして、まずはLinuxコンソーシアムと同じく法人会員40社獲得を目指す。渡辺代表は、「会員のやる気をひしひしと感じる。各部会に対してもやりたいことがあったらそのつど増やしていいと考えているし、運営側としても支援していきたい」と期待を寄せている。(鍋島蓉子)

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需要伸長傾向も、課題が山積

 OSS(オープンソースソフトウェア)のビジネス利用はどのくらい進んでいるのか、どの程度の需要があるのか。情報処理推進機構(IPA、西垣浩司理事長)が2008年度にソフトウェア開発企業、情報処理サービス業を対象に調査した「第2回オープンソースソフトウェア活用ビジネス実態調査」(有効回答企業数802社)の結果によると、顧客向け、自社利用を合わせて7割もの企業がOSSを利用しているという。

 一方、OSS活用ビジネスの顧客企業の業種は「製造業」とする回答が253社、「サービス業」が207社、「官公庁・自治体・外郭団体・学校」と答えた企業が184社、の順で多かった(回答企業数687社)。

 また、顧客からのOSSの引き合い状況は「増えている」との回答が152社、「減っている」との回答が27社という結果が出ている(回答企業数同)。

 顧客企業にとってのOSS利用のメリットは、「導入コストが低減できる」としている回答が62.9%、「ある程度実用に耐えうる性能、信頼性が備わってきた」と答えたのが32.1%、「ベンダー依存性が排除できる点」と答えたのが26.9%だった(顧客企業回答数680社)。

 だが、顧客企業がデメリットとして捉えているのは、「自社内にOSSのシステムを管理できる人材がいない」ことを挙げた回答が35.0%、「ベンダー、SI事業者の保守・サポート体制が不安であること」が34.9%、「ベンダー、SI事業者の保守・サポートが長期的に保証されない可能性がある」と答えたのが31.7%だった。

 また、多岐にわたるライセンス体系は解釈が複雑で、ビジネス利用する際の条件の緩厳も異なることがネックとなっている。調査の結果をみる限り、OSSのニーズは伸びていることがうかがい知れるものの、実ビジネスの利用に当たっては課題が山積している。(鍋島蓉子)