セキュリティ事業のトレンドマイクロ(エバ・チェンCEO)は、大手国産サーバーメーカーとの協業を強化し、標的型サイバー攻撃対策「Deep Discovery」の事業拡大を目指す。「Deep Discovery」を国産メーカーのアプライアンスに組み込み、メーカーの販社を通じて提供する動きを加速していく。今後、SaaS型展開も視野に入れ、ターゲット市場を大手から中堅・中小の企業に広げる。

大三川彰彦
取締役副社長
 トレンドマイクロの「Deep Discovery」は、企業ごとに異なる標的型サイバー攻撃に対応するネットワーク監視ソリューションだ。2012年5月に発売し、個々のユーザー企業に最適な防御を提供する事業コンセプト「カスタム ディフェンス」の中核をなす商材である。

 同社は、「Deep Discovery」を米サーバーメーカーを製造元とする自社アプライアンスで展開するほか、国産メーカーにソフトウェアとして提供し、メーカーの機器に組み込んだかたちでの販売の拡大に取り組んでいる。

 トレンドマイクロは、パートナー契約を結んでいるシステムインテグレータ(SIer)やネットワークインテグレータ(NIer)を通じて「Deep Discovery」を販売するルートも活用している。自社のハイタッチ営業で見込み案件を獲得し、パートナーが実売に結びつけるスタイルだ。しかし、販社から「外国製のアプライアンスは販売しにくい」という声が上がったことで、国産メーカーへのOEM供給をすることを決めた。

 第一弾として、12年7月にNECとの協業を果たした。NECのPCサーバー「Express5800」に「Deep Discovery」を搭載したアプライアンス「Deep Discovery powered by Express5800」を発売した。

 トレンドマイクロの大三川彰彦取締役副社長は、「この10か月の間、『Deep Discovery powered by Express5800』は15台以上の注文をいただいた」と満足げ。NECと組んだ共同展開に確かな手応えを感じているという。現在、富士通との提携に向けて動いているところで、「近々、正式に決めたい」(大三川副社長)としている。

 「Deep Discovery」は、高度な技術を盛り込む標的型サーバー攻撃対策であることから、金融や製造といった業種の大手企業を主なターゲットに据えている。しかし、トレンドマイクロが国産メーカーとの協業による副次効果として期待しているのは、中堅・中小企業(SMB)の市場開拓だ。

 NECの機器を活用する「Deep Discovery powered by Express5800」は、NECが大手企業向けの直販を行い、NECの有力販社である大塚商会がSMB向けの販売を手がけている。トレンドマイクロは、今後、富士通との共同展開が確定すれば、同じようなかたちで、富士通の販社網も活用してSMB市場にアプローチする。

 標的型サイバー攻撃は現時点で、主に大手企業をターゲットとしている。しかし、その延長線で、大手企業と取引しているSMBも攻撃の被害を受ける可能性がある。トレンドマイクロは、SMB市場を開拓するために、「Deep Discovery」をSaaS型で提供することを視野に入れている。

 とくに、大塚商会と取引関係がある地方に強い販社に期待しているという。NECなど、国産サーバーメーカーを入り口としてメーカーの販社を活用し、さらにその販社も活用することによって、「Deep Discovery」を大手企業からSMBまで幅広い市場に提供する戦略だ。

 大三川副社長は、「国産メーカーはパートナーとして大変重要な存在だ。強固な関係を築いて、『Deep Discovery』の販売拡大につなげたい」としている。(ゼンフ ミシャ)