【サンフランシスコ発】米オラクル(ラリー・エリソンCEO)が、米カリフォルニア州サンフランシスコで開催している自社イベント「Oracle OpenWorld(OOW) 2013」。2日目のプログラムは、サンフランシスコ沖で開かれているヨットレース「アメリカズカップ」に出場中のオラクル・チームへの応援から始まった。最初に登壇したマーク・ハード社長は、「皆さんにかけ声を上げてほしい」と呼びかけ、会場を埋め尽くした聴衆が「GO ORACLE TEAM USA!」と叫んだ。

マーク・ハード社長がヨットレース「アメリカズカップ」に出場中のオラクル・チームへの応援を呼びかけた

 ハード社長は、前日のラリー・エリソンCEOが示した「インメモリ・データベース(DB)」など、新製品を投入する必然性や裏づけをとうとうと話した。「1993年に導入して以来、30年も使っている古いアプリケーションが、いまだに多く存在する。ITを使う側では、古いままでいいのか、気にはなっているが、IT予算を無限に使える企業はない。イノベーション(革新)を起こすためにIT予算を使える企業もない。コストを減らして、初めて新たなIT予算を投入できるのが現実だ」と、運用・保守に膨大なコストを費やす既存のレガシー・システムを入れ替え、コストが安く性能が世界最高のオラクル製品で最適化することを勧めた。

 前日、エリソンCEOが公表した「Oracle Database 12c」向けのインメモリDBオプション「Oracle Database In-Memory」は、「12c」の拡張機能として分析、データ・ウェアハウジング、レポート、オンライン・トランザクション処理(OLTP)のDBパフォーマンスを高速化する。ハード社長は「12c」で実行されるすべてのアプリケーションは、「『Oracle Database In-Memory』オプションのメリットを自動的、透過的に活用できる。既存アプリは、DBの機能を維持したまま、高速化だけが実現する。このオプションを使って、DBが100倍速くなったらどうなるか。多くのシステムを使って構築し、運用・保守に膨大な費用を投じる必要がなくなる。また、垂直統合製品『Oracle Engineered Systems』のR&Dには、毎年50億ドルを投資している。昨年からメッセージは、変わっていない。繰り返しこれを伝えていく」と、来たるべきクラウドやビッグデータ時代への備えをするよう訴えた。

初日、2日目ともハード社長のキーワードとなったのが「Internet of Things」

 ハード社長は、垂直統合製品の一つ「Oracle Exalytics」を使った事例として、航空機製造メーカーのエアバスを紹介した。エアバスは、最新機「A380」のテスト過程で、試用機にセンサを装着し、150フライト分/10万センサという膨大なデータを瞬時に収集・分析している。会場に写し出されたビデオレターに登場したエアバスの開発責任者は、「伝送時間、データ記録、分析速度などを上げることができ、精度の高いデータを使って開発時間を大幅に短縮できた。結果的には、お客様に対してよりよい製品が届けられる」と話した。いまもオラクルの開発チームと連携した分析環境を整えているという。初日、2日目とも、ハード社長のキー・メッセージになっている「Internet of Things(IOT=モノのインターネット)」時代に備えた事例だ。

製品開発責任者のトーマス・クリアン エグゼクティブバイスプレジデントは、Hadoopとの連携など具体例に触れながら、インメモリDBなどの優位性を強調した

 続いて登壇したのは、製品開発担当のトーマス・クリアン エグゼクティブバイスプレジデント。まず、「Oracle Engineered Systems」の優位性から始め、前日にエリソンCEOが発表した新製品に触れた。「Hadoopに蓄積したデータを『Oracle BI』やストレージ、『Engineered Systems』などに加え、新たに投入するインメモリDBが拡張されれば、膨大なビッグデータを瞬時にさばくことができる。1時間に15PB(ペタバイト)のデータをDBに送ることができ、どんな既存アプリとも連携できる。DB側で分析することが可能になる」と、インメモリDBなど、同社製品の優位性を技術面から強調した。

講演の途中、ソフトバンクBBの孫正義社長がビデオ出演し、オラクル製品を使った通信回線の高速化に触れた

 クリアン エグゼクティブバイスプレジデントの講演のなかには、日本企業の事例も登場。一つは、NTTドコモが「Engineered Systems」を使って1日・70万イベントのモバイル・トラフィックを分析し、「データの価値を生み出した」と指摘。また、ソフトバンクBBの孫正義社長がビデオ出演し、「すべてのメイン・システムでオラクル製品を使い、積極的なデータ分析・活用を進めている。モバイル利用する顧客の行動を分析するなどして、ネットワークの可用性を高め、通信環境の質を大幅に向上できた。(オラクル製品を使った)今までの体験やノウハウは、この先も活用し続ける。クラウドは人類にとって最も重要な資産になる。オラクルとの関係は、もっと重要になる」と、「Engineered Systems」を使って競合他社に勝る通信回線の高速化を実現し、今後も改良を加えていくとした。

 「データ量の単位はZB(ゼタバイト)になる」。次に登場した米インテルのダグラス・フィッシャー氏はこう述べて、オラクルのハード社長が繰り返し口にするIOTとチップの進化について語った。挙がった事例のなかで参加者の注目を集めたのが、ゼネラル・エレクトリック(GE)の航空機用エンジン開発でのITの使われ方。GEでは、エンジン開発で一つのターボジェットエンジンに20のセンサを搭載し、実働試験を繰り返す。処理するデータ量は8.1ZBだという。

 フィッシャー氏は、「TwitterのAPIコールはすでに膨大だが、さらにデータ量は増える。ただし、全体の15%の企業はデータを活用できていない。データを分析するアーキテクチャが柔軟でなければならない」としたうえで、インテルが最近発表したSDN(Software-Defined Networking)製品や最新のチップ「Xeon E5-2600 v2シリーズ」などを説明。「オラクルとは、今後もDBアクセス分野などでバリューチェーン環境を築いていく。IOTで、モバイルを含めセンサを発するデバイスが増える。インテルは、すべてのコンピューティングのセグメントをリードしていく」と、買収したAepona社のAPIサービスと開発ツールを用いたサービス開発にも言及した。

フィッシャー氏(右)の講演には元NFL選手のジェリー・ライス氏が登場。インテルと連携して取り組むデータ分析を説明した

 インテルのセッションには、地元のアメリカンフットボールチーム、NFLのサンフランシスコ・フォーティナイナーズで3度のスーパーボウル優勝に輝いたワイドレシーバー、ジェリー・ライス氏が登場。現在、スポーツアナリストとして選手育成に携わっているライス氏は、「カロリー計算や心拍数の計測など、トレーニングに関わるデータ分析をインテルと連携して役立つデータにしている」とボールを片手に語り、会場を沸かせた。

サーバー技術担当のメンデルソン シニアバイスプレジデントは「Database as a Service」について語った

 このほか、サーバー技術担当のアンドリュー・メンデルソン シニアバイスプレジデントが、データベース関連のセッションで、「12c」と「Engineered for Clouds and Big Data」について語った。「『12c』は、コンテナデータベースを用いることで、仮想マシンでない方法でシンプルにDBサーバーを統合できる『プラカブルデータベース』だが、最近ではこれを開発環境で使い、マルチテナンシーで機能のクローンを構築する例が増えた」と述べ、「Database as a Service」という言葉で用途の幅が広がっていることなどを説明した。

 また、この日は製品開発担当のトーマス・クリアン エグゼクティブバイスプレジデントがミドルウェアのセッションに再び登場し、ここ半年でエンハンスした機能を紹介。モバイルデバイスで稼働する環境を簡単に構築できる「Oracle SOA Suite」や、モバイル環境と企業データを統合する「Oracle Data Integration Suite」などについて解説した。(谷畑良胤)


<Oracle OpenWorld 2013(OOW 2013)レポート>
米オラクル、インメモリDB発売へ、「Oracle OpenWorld 2013」でエリソンCEOが明言

<昨年の「Oracle OpenWorld 2012」レポート>
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