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CTOがやりたかったラリー・エリソン氏、IaaS、PaaS、SaaSでほぼNo.1

2014/09/30 18:50

【サンフランシスコ発】米オラクル(マーク・ハード、サフラ・キャッツ共同CEO)が9月28日から5日間、米サンフランシスコで開いている年次イベント「Oracle OpenWorld San Francisco(OOW)2014」の初日(米国時間9月28日)、CEOを退いたラリー・エリソンCTO(正確には経営執行役会長兼CTO)が登場した。

 いつになく陽気だった。ライバルのセールスフォース・ドットコム(SFDC)を語る場面などでは一人で大笑い、というより高笑いする場面が何度もあったほど。昨年のOOW2013は、同じ時期にヨットレース「アメリカズカップ」で、エリソンCTOが出資するオラクルチームが奇跡の快進撃を続け、ついに決勝に進出。その決勝当日、2度目の基調講演を“ドタキャン”し、世界中から集まった約1万人のIT関係者をがっかりさせた。今思い起こせば、聴衆を喜ばせたり、驚かせたりするアップデートがないことを負い目に感じていたのだろう。決勝進出を大義名分に、雲隠れを決め込んだのかもしれない。

いつになく、陽気なラリー・エリソンCTO

 今回のOOW2014は、例年通り、基調講演を2度行った。1回目は、冒頭から大規模な投資を続けて2014年度(14年5月期)に花開いた成果をとうとうと語った。「14年度はオラクルにとって重要な年であり、ターニングポイントになった年だ」。今までオラクルは、アマゾンやSFDC、アマゾン(AWS)など、有力クラウドベンダーの後塵を拝していた、という認識だったものが一転、「No.1クラウドベンダーを目指す」と宣言した。

30年前の約束を果たす

 エリソンCTOは、数年前のCEO時代、「多くのテクノロジーをクラウドに移す」と、全面的なクラウドシフトを匂わせていた。だが、その後パートナーやユーザー企業が期待する機能やサービスなどのアップデートが出てこない。しかし、この日は「SFDCのようなSaaS、アマゾンのような安価なクラウドサービスなど、トップベンダーを超えるサービスやインフラを手にした」「30年前の顧客との約束を果たす」と、水を得た魚のごとく、いつもの調子で自慢話に花を咲かせた。

 実際にSaaSのサービス数では、この1年でタレントマネジメント、ヒューマンリソースマネジメント(HCM)、eコマースなどで、他社に追随してクラウド化を完了。SaaSアプリケーション数でSFDCなどを上回ったという。また、SFDCや、ERP(基幹業務システム)、CRM(顧客関係管理)、eコマースをクラウドで提供するネットスイート、SAPなどを取り上げ、「有力クラウドベンダーのインフラ(IaaS)は、ほとんどがオラクルプラットフォーム(Oracle Engineered Systemsなど)だ」と勝ち誇った口調で述べ、「IaaS、PaaS、SaaSのすべてをマルチテナントで利用でき、ボタン一つでオンプレミスのソフトウェアがクラウド化できるのはオラクルだけ」と、競合を見下ろし加減で語った。

 14年度までのクラウド化を振り返り、「最初の波はカスタマーエクスペリエンスで、第二の波がHCMだった。第三の波はERPで、オラクルはハイエンドERPをマーケットに投入した最初の会社だ」として、「旧ハイペリオンをクラウドへ移行して実現したパフォーマンス管理製品(EPM)の分野では唯一だ」と、競合への対抗措置はほぼ完了したと思わせるほどの口ぶりだった。

広い舞台を縦横無尽に動き回るラリー・エリソンCTO

 クラウドサービスのなかで、SaaSに関しては、「14年度内に必要なSaaSアプリケーションはすべて自社で開発した。自社開発できないアプリは、買収で獲得した」と、SFDCなどに執念で追随した状況を説明。IaaSは、インフラで高性能の「Oracle Engineered Systems」や、マルチテナント性をもつオラクルデータベース(DB)で「Oracle Cloud Platform」という基盤としてつくり込んだ。この基盤は、マルチテナントの「Oracle Database Cloud Service」とミドル層に「Weblogic Java Cloud Service」を組み込み、ソーシャル、モバイル、アナリティクス、ID管理を標準搭載。パートナーがこの基盤上で開発したものを含めて、SaaSアプリはこの機能がついてくる。

 インフラ側の残る課題は、PaaS部分だ。エリソンCTOは、「大発表だ」と豪語しながら、新たなPaaS環境を明らかにした。12年に「Schema as a Service」と呼んでいたPaaSをカスタマイズし、「オンプレミスのソフトをクラウド上に5分で展開でき、一度クラウド上に乗せたSaaSアプリをオンプレミスに戻すことができる」と、データベース技術があるからこそ実現した環境を説明した。

 30年前の約束とは何を指すのか。オラクルは、ミニコン、クライアント/サーバー、ウェブアプリ、そしてクラウドと、世代が変わるたびに、データベースをはじめとして、つくり直す必要がない環境を整えてきた。これをウェブアプリからクラウドへの変遷過程でも自動で移行できるようにしたことで、「約束を果たした」ということのようだ。

 エリソンCTOは、御年70歳でトップの座を後進に譲った。経営からは退くが、それでもオラクルのビジネスの根幹であるテクノロジーの進化に関する舵は取り続ける。その道筋ができたからこそ、CEOを降りたのではないだろうか。詳細は、10月2日、2回目の基調講演で語られることになる。(谷畑良胤)
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外部リンク

米オラクル=http://www.oracle.com/

日本オラクル=http://www.oracle.com/jp/