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米オラクルが無償パートナー制度を発表、コミュニティ型でクラウド加速

2014/09/29 18:50

【サンフランシスコ発】絶対的な権力者として米オラクル(マーク・ハード/サフラ・キャッツCEO)のトップに君臨し続けたラリー・エリソン前CEOが、会長兼CTOに退いて2週間。オラクル最大の年次イベント「Oracle OpenWorld San Francisco(OOW)2014」が、現地時間の9月28日、米サンフランシスコのモスコーニセンターなどで開幕した。

女性CEO、初見参

 10月2日までの5日間開かれるOOW2014は、145か国から6万人以上が来場し、オンラインで世界の700万人が参加する世界最大級のイベントだ。日本からは、日本オラクル関係者を除いて約350人のパートナーやユーザー企業が参加した。エリソン氏の意志を引き継ぐハードCEOとともに、女性のサフラ・キャッツCEOが就任後初めてパートナーや顧客の前に登場。パートナーのOracle PartnerNetwork(OPN)向けセッションで、世界中のパートナーがオラクル製品を使った実績を改めて確認したときには「涙ぐんでしまったほど」と真情を吐露し、感謝の意を伝えた。

緊張した面持ちでパートナーに向け第一声を放つサフラ・キャッツCEO

 ここ数年のOOWのスケジュールと同じく、日曜日の初日(9月28日)は、夕方のエリソンCTOが登壇する前、OPNの関係者を集めた基調講演があった。最初にオラクルの冠を背負った飛行機でアクロバットフライトをするエアショーパイロットのショーン・タッカー選手が登場し、「常に目標を達成する卓越性を備えた『チームワーク』が重要だ」と、パイロットとして一人で飛行するだけでなく、チームの重要性を述べて、パートナーたちを奮い立たせた。

アクロバットフライトのパイロット、ショーン・タッカー選手がOOW2014の初日を盛り上げた

新たなパートナー制度とクラウド移行促進のライセンス

 続いて、米本社でパートナー・アライアンスを担当するリッチ・ジェラフォ上級副社長が、ISV(独立系ソフトウェアベンダー)、VAD(付加価値ディストリビュータ)、SIer(システムインテグレータ)のカテゴリ別に2014年度(14年5月期)の実績を述べたあと、クラウド時代に即した新たなパートナー制度とライセンス体系を明らかにした。

最新のパートナー向け施策を語るリッチ・ジェラフォ上級副社長

 ジェラフォ上級副社長は、「オンプレミス、パブリッククラウド、ハイブリッドクラウドの、どの環境でも幅広い選択肢を提供する」と、パートナーがクラウドを提供することで収益を向上する新施策に触れた。発表した新たな仕組みは、「Oracle PartnerNetwork Cloud Connection」というクラウドに特化したパートナー制度。オラクル製品やサービスを提供してきたSIer、リセラー、ISV、VADなど、一定の実績が参加条件となる従来型のパートナーに加え、無償でOPNのプログラムを利用できようにして、幅広い層のクラウドプレイヤーを囲い込む。詳細は、日本時間の9月30日、公式にリリースが出る予定だ。

ERPはクラウドでもライセンスを引き継ぐ

 ジェラフォ上級副社長によれば、「既存のオラクル製品・サービスの知識がなくても、スタートアップのITベンダーでも参加できる『コミュニティ型』のパートナー制度だ」という。また、オンプレミス環境で利用しているライセンスをクラウドでも利用できるようにするプログラム「Oracle Customer 2 Cloud」を、「E-Business Suite」や「JD Edwards」などのERP(統合基幹業務システム)を対象に実施し、クラウド利用の促進を目指す。

 この後、共同CEOの一人、ハードCEOがパートナーに檄を飛ばした。「SaaS、PaaS、IaaSのすべてのレイヤをパートナーが一度に運用できる仕組みをつくった。Amazon(AWS)などとの競争にも勝ち抜くことができる。データセンターは20か国/20か所にあるが、地区をもっと広げる。より多くのディール(案件)に参加する機会を一緒につくりたい」と、コーヒーを片手にゆったりした口調で語りかけた。

マーク・ハードCEOは、アマゾン(AWS)などを“仮想敵”とした戦略を展開した

 そして、ハードCEOと共同CEO体制を敷くキャッツCEOが、OOW2014で第一声を上げた。例年のOOWでは「CFO」として登壇する機会が多く、なじみの顔ではあるが、緊張した面持ちなのか、広い壇上の中心からほとんど離れず、世界のパートナーを前に思いを伝えた。「当社は、クラウド時代に必要なすべてのテクノロジーをもっている。オラクルの完成されたクラウドと、パートナーのもつノウハウで製品群をつくり上げ、統合したい。すべては、顧客の成功のためにやっている」と協力を仰いだ。

 キャッツCEOによれば、14年度は「OPNが大幅に拡大した年」。再販権をもつOPNに参加するパートナーが1年間で4600社増え、合計2万2000社になったほか、オラクル製品・サービスの技術認定「OPN認定スペシャリスト」のうち、クラウド関連が世界で1万6000人増えたという。

2013年の「アメリカズカップ」に優勝したオラクル艇がモスコーニセンターに飾られ、船艇の下では、当時のクルーが当時の模様を伝えていた

 OPN向けの基調講演では、曖昧な表現で新制度を明らかにしていたが、この後のエリソンCTOの講演で、「No.1クラウドベンダー」を目指すオラクルの意気込みとOPNの新制度との整合性が明らかになる。(谷畑良胤)
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外部リンク

米オラクル=http://www.oracle.com/

日本オラクル=http://www.oracle.com/jp/