ベトナムやタイ、マレーシア、インドネシア、フィリピンなど、東南アジア10か国で構成される「ASEAN」(東南アジア諸国連合)。面積は約448万km2と日本の12倍、人口はおよそ6億人と日本の約5倍というこの有望市場を、日本のITベンダーは開拓しようとしている。ASEANは、親日の国が多いだけではなく、米国の大手ITベンダーがまだそれほど深く入り込んでいないこともあって、日本のメーカーやシステムインテグレータ(SIer)にとって、身の丈に合った海外市場といえる。各社はどんな取り組みで開拓を進めているのか──。今号からの「ASEAN面」で実情を紹介していく。

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 「ASEANは買い手市場の社会で、とくに、コンビニを好むタイの消費者の購買行動は日本とよく似ているので、商機がある」。現地へひんぱんに出張し、ASEANの情勢を収集しているNECの大島一郎・シニアエキスパートはそう語る。

 タイの首都、バンコク市内のショッピングモールにあるフードコート。日本でもおなじみの光景だが、フードコートは一か所でさまざまな料理を気軽に楽しめるので、中間層を中心に、ASEANでも人気を集めている。行列ができる売店のスタッフは、休む間もなく食材を洗ったり、切ったりするので、手に汚れや水がつく。「POS端末には、濡れた手で操作しても壊れないような防水機能が求められる」と、POS端末のASEAN展開に取り組んでいるNECの大島シニアエキスパートは分析する。「IT」を提供することにとどまらず、防水や防塵など、現地で使いやすいようにして、その「かたち」にもこだわる必要がありそうだ。

 ASEANのリテール市場に大きなインパクトを与える可能性が高いのは、域内の物流や投資の自由化を目指す「ASEAN経済共同体」の実現だ。2015年までの設立に向けて、各国で取り組みが進められている。リテール市場が動けば、POS端末やウェブ販売と実店舗を連携させる「O2O」のソリューションなど、さまざまな需要が出てくる。日本ベンダーは、市場の可能性をものにするための準備は整っているのか。成否を決めるのは「スピード」。迅速な経営判断こそがASEAN市場開拓への扉を開く。(ゼンフ ミシャ)