2014年の日系IT企業の海外ビジネスは、ASEAN地域での法人設立やM&Aといった積極投資が目立つ一方、中国に対する大規模投資は控えるケースが多かった。現地法人各社は、新規事業の創出よりも、既存の中国事業の推進に力を注いだ。(真鍋武)

 日系IT企業の中国ビジネスは、対日オフショア開発と中国国内向けITソリューション・サービスの提供に大別される。対日オフショア開発では、毎年10%程度の人件費上昇に加え、2013年からの急激な円安元高によって、上海や北京では、利益捻出が難しくなっている。ちなみに、為替レートは2年前と比べて約45%の円安が進行している。

 しかし、日本国内では、みずほ銀行や日本郵政の大規模システム統合案件、マイナンバー制度(社会保障・税番号制度)の対応、東京五輪開催に向けたシステム特需などによって、エンジニアが不足。公共系の案件では、「情報漏えいを懸念して、中国への発注を控えるケースもある」(NEC(中国)の日下清文総裁)が、それ以外では日本側としても、中国の人手を借りざるを得ない。中国でのオフショア開発は、「案件はあるが、利益を出せない」という不健全な状況にあるわけだ。先行きが不透明とみて、2014年は「現状を維持する」とした企業が多かった。なかには、シーイーシー(CEC)やSCSKの中国法人など、今後の大きな成長は見込めないとしてオフショア開発事業から撤退する企業もあった。

 中国国内向けのITソリューション・サービスでは、従来通り、現地日系企業の開拓に力を注ぐ日系IT企業が大半を占めた。中国商務省によると、2014年1月~6月の日本の対中直接投資額は、前年同期比48.8%減の24億米ドル。日系企業の投資は全体額では抑えられているが、「ITはコスト削減に寄与するので、投資意欲は鈍ってはいない」という見方が強い。しかし、上海菱威深信息技術(iVision)の芹澤亮総経理が、「中国の日系企業のIT市場規模は約3000億円」と推測するように、市場規模は限られている。オフショア開発に専念していた日系IT企業が、中国の日系企業向けIT市場に参入するケースも増えており、競争が激化している。日系IT企業は、「システム設計から構築、運用、保守までITトータルサービスを提供できることが強み」とアピールするケースが多いが、もはやそれだけでは他社と差異化できない。自社ソリューションを開発するなど、独自の強みをもつことが求められる。

 中国ローカル企業の開拓については、依然として進んでおらず、顧客の大部分を日系企業で占めるケースがほとんどだ。サイオステクノロジー、ウイングアーク1st、キヤノンITソリューションズの現地法人など、ローカル系の顧客比率が高い企業もあるが、彼らも売掛金回収やシステム要件変更、保守契約など、中国独特の文化・商慣習にやりづらさを感じている。日系IT企業は、日系向けビジネスで事業基盤を安定させたうえで、ローカル企業の開拓に挑戦することがリスク分散上は望ましいといえる。