ASEANへの舵切り、明確に

 「中国に関しては、最近、進出コンサルよりも撤退コンサルの件数のほうが多い」。日系企業の海外進出を支援するグローバル・パートナーズ・コンサルティングの高田正昭・取締役は、苦笑しながら、そう語る。従来は、中国大陸での事業展開を目指して、まずは香港に拠点を設ける日本企業が多かったという。それが、ここ数年は香港からシンガポールへのシフトが顕著になり、目指すのは中国ではなく、タイやインドネシアをはじめとする「ASEAN上陸」、ということである。

 中国では最近、NTTデータの中国ビジネスの大規模な再編や日立製作所の中国子会社であるHISSの清算など、利益創出の難しさを受けて、大胆な決断に踏み切った日本ITベンダーの動きが目立っている。それと同時に、海外ビジネスの舵をどんどんASEANに切るトレンドも明確になりつつある。「親日的で事業を展開しやすい」「将来、データセンターやクラウドに対するニーズが旺盛になる」。日本ITベンダーの経営者や海外事業担当者は口を揃え、ASEANビジネスに注力する背景についてこう述べている。

 日本のITベンダーだけではない。外資系メーカーの幹部に話を聞くと、「中国ビジネスは悩みどころ」と本音をはく人が多い。外資系も、ここにきて、ASEANでの事業展開に重点を置いたり、あるいは、あらためて日本ビジネスの拡大を目指したりする動きには、「中国の難しさ」が関係しているようだ。ASEANはこれまで、各国の力が弱く、中国と対等な目線で立ち向かうことができなかった。しかし、今年末に「ASEAN経済共同体(AEC)」が発足すれば、ASEANの力が一気に強くなり、ゆくゆくは「アジアの勢力図」も大きく変わるとみられる。

 もちろん、NTTデータも、日立製作所も、中国事業から撤退することはないだろう。しかし、投資のウェートを中国よりもASEANに置くトレンドは確実で、ここに、日本のITベンダーの海外事業の「明日」についてのヒントがあるといえそうだ。ASEANで体力をつけ、それを踏まえて、あらためて中国に挑むという道もあるだろう。とにかく、時代の流れはASEANだ。海外事業の将来展望はASEAN抜きには考えにくい。(ゼンフ ミシャ)