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コンセプトを変えた今年のCEATEC、IoTの法人活用を実感

2016/10/18 22:02

 昨年までITとエレクトロニクスの総合展示会として開催してきたCEATECだが、今年は「つながる社会、共創する未来」とテーマは踏襲しつつも、「CPS(サイバーフィジカルシステム)/IoT(モノのインターネット)の展示会」とコンセプトを変更して行なわれた。開催曜日も従来は水曜日~土曜日だったが、今回は火曜日~金曜日と、IoTの広がりからくるITの法人活用を大きく見据える格好となった。期間中の登録来場者数は、昨年の13万3048人に対して今年は14万5180人と増加、成功裏のうちに閉幕した。

 今年のCEATECで感じた点をいくつか列記してみたい。まず、ホール5と6で行われていた「CSP/IoTを支えるテクノロジ、ソフトウェア」エリアでは、ソシオネクストが3月にNHKと共同で開発、発表したHEVC符号化方式に対応した8K映像のデコードを1チップで処理可能なLSIとして「SCH801A」を展示していた。すでにシャープなどに納入しており、リオ五輪の中継では全国のNHKの放送局でパブリックビューイングを試験的に実施していたという。今回は、高度広帯域衛星デジタル放送方式(ISDB-S3)と複数搬送波伝送方式(ITU-T J.183)の両方式に対応しており、4K・8K 放送の受信が可能になる最新のデジタル放送復調LSI「SC1501A」や、関連ソリューションをあわせて公開した。「CEATEC AWARD 2016」のテクノロジ・ソフトウェアイノベーション部門でもグランプリに輝いたデバイスを前面に押し出し、それらが実現する映像に来場者の多くが興味を示していた。
 

実際に8Kを可能にする映像とともに展示を行う

 ホール2の「社会」エリアでは、日本アンテナが今回のCEATECのテーマに合わせてIoTソリューションを前面に押し出した。さまざまな環境をセンシングするデバイスで集めた情報と、従来から展開していたセキュリティカメラの情報を連動させた災害監視ソリューションが目を引いた。「ここ数年、自治体などをはじめとした既存顧客やそのパートナーから、有線だけでなく無線で何かできないか、との要望を受けることが多くなってきた」(情報機器技術部の志久間仁氏)と、IoTの盛り上がりを実感しているという。
 

IoTソリューションを前面に押し出したブースを展開
 

センサやカメラと連動した災害監視ソリューション

 ホール4の「特別企画」エリアでは、主催社特別企画として情報通信ネットワーク産業協会(CIAJ)、電子情報技術産業協会(JEITA)、コンピュータソフトウェア協会(CSAJ)の3団体が主催して、新しいCEATEC JAPANのコンセプトを発信すべく「IoTタウン」を展開。日本発のITを活用したユーザー企業が新たな”街のカタチ”を具現化し、「暮らし」「社会」「街」の3つにゾーニングし、展示とセミナー形式で展開していた。
 

バルーンが飛び、大々的に展開されたIoTタウン

 「街」ゾーンでは昨年から続いて2度目の出展となった楽天/楽天技術研究所では、楽天市場を中心とした”カタチ”を紹介した。「IoT時代の店舗エンハンスメント」と位置づけ、顧客の属性や服装などの環境情報をセンサで読み取り、膨大な数の中からより顧客の意向に沿った商品を提案するシステムをはじめ、Eコマース出展店舗のリアルな体験をエンハンスする展示を披露。その横では、JTBのグループ企業のJTBプランニングネットワークが、インタラクティブサイネージを出展した。アスカネットが提供する空中上に像を結合させる特殊ガラスにセンサを組合せることで、空中映像がインタラクティブに操作可能なソリューション「エアリアルイメージングプレート」に、旅をイメージさせるコンテンツを配信。店舗にいながら、旅のイメージを膨らませることが可能とした。いずれも最新のIT技術に自社が持つコンテンツを最適な形で配信することで、来場者の関心を呼び込んでいた。

楽天、JTBともに自社が持つコンテンツに合わせた最適な最新技術で”街のカタチ”を具現化

 「暮らし」ブースで出展していた豆蔵ホールディングスブースでは、オープンストリームが迷い猫の位置特定IoTサービスとして「ねこもに」を展示した。これは猫に取り付けた首輪に内蔵された発信機(BLEビーコン)が、スマートフォンに猫との距離情報を伝達。スマートフォンにインストールされた専用アプリが、猫のいる確率の高い場所に飼い主を誘導する。半径50メートルを離れると発信機から情報が届かないが、首輪をつけているすれ違った猫たちの情報もスマートフォンに集めるため、猫好きコミュニティ機能も目下開発中だ。アマゾンなどのECサイトを通して3000円~4000円で、来年春の発売を目指している。もともとSIerとして知られる同社だが、昨年あたりから「新しいビジネスを社内で生み出せないか」(システムインテグレーション事業部の中村真子アプリケーションスペシャリスト)と模索するなか、今回のソリューションに辿り着いたという。
 

赤い首輪には薄い発信機を内蔵。発信機からの情報で、「迷い猫撲滅」を目指す

 なお、来年のCEATEC2017は、10月3日から6日まで、幕張メッセでの開催を予定している。(藤代格)
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外部リンク

ソシオネクスト=https://www.socionext.com/jp/

日本アンテナ=http://www.nippon-antenna.co.jp/

アスカネット=http://www.asukanet.co.jp/main/index.html

豆蔵ホールディングス=http://www.mamezou-hd.com/

オープンストリーム=http://www.opst.co.jp/