応研(原田明治社長)は、金融機関の口座明細データを取得しAI(人工知能)が仕訳を作成する「大臣フィンテックサービス」を5月から提供開始する。同社の「大臣シリーズ」を利用中で、保守サービスに加入している企業は無償で使える。1980年創業、九州地区初のパソコン教室としてスタートした同社。受講する企業関係者の要望に応じ、さまざまなソフト開発をしてきた。現在の「大臣シリーズ」は1986年に発売し、30年以上が経過したが、創業以来培ってきた技術力を生かし、競合する市場の他社に先がけフィンテックに参入した。

開発開始から1年弱でAI開発

 応研が無償提供する大臣フィンテックサービスは、インターネット経由で金融口座から入出金明細データを取得し、AIが自動で仕訳データを作成する。金融機関から情報を取得する機能は、イー・アドバイザーが提供する口座管理サービス「MoneyLook」を採用している。経理業務で負担を強いられる入出金処理業務などを効率化できるほか、仕訳作成の自動化で起票漏れや二重起票、入力ミスなどを防止することができるという。
 
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原田明治社長

 原田社長は、今回、同サービスを提供するにいたった背景について、次のように語る。「銀行口座の情報を入手する機能は『MoneyLook』を使っているが、仕訳を作成するAIは自社開発した。昨年春、当社の研究部門に開発を指示し、サービス化にこぎつけた。顧客の要望に応じ、個別企業向けに会計ソフトを開発していた当時から数えて30年にわたり業務ソフト開発に携わっている。創業時から培ってきた技術力や新しいことに取り組む姿勢が奏功し、短期間で提供することができた。競合市場で勝つには、他社に先がけて新しいテクノロジーを搭載する必要がある」と、自社開発のAIを使ったフィンテックに参入した経緯を説明する。

 大臣フィンテックサービスは、「大蔵大臣」をはじめとする会計シリーズだけでなく、「販売大臣」でもAIの仕訳による効率化が可能だ。口座明細データからは、入金伝票の自動起票や、回収予定情報の参照もできる。対応する金融機関・サービスは、およそ1,200、国内の99%以上をカバーする。クレジットカードの利用明細の取得も可能だ。具体的には、都市銀行、地方銀行、信用組合、信用金庫、農協、信販会社で使える。

業務負担は4分の1に軽減

 AIの仕訳は学習プログラムで、一旦登録した仕訳が次回から自動化できる。同社調査によると、業務負担は2か月目に約半分、6か月後に約4分の1に軽減したという。定期的に企業間取引をする中小企業をモデルケースにしているが、「使えば使うほど効率アップできる」(原田社長)と、自信を見せる。
 
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AIが仕訳を作成し、業務負担を約1/4に効率化

 同サービスは、大蔵大臣と販売大臣(両NXバージョン3)から順次開始。同社の保守サービス(DMSS/DTSS)に加入のユーザーは、同サービスを無償で利用できる。業種向けの会計ソフトである福祉大臣、建設大臣なども今後対応を予定している。原田社長は、「このAIを開発した当社の研究部門では、AI開発の技術ノウハウを生かし、自社パッケージソフトだけでなく、他の企業内業務やコールセンターなどに応用することを検討している。当サービスは、しばらく無償提供するが、カスタマイズが必要な顧客や販売パートナーの声を参考に有償化し、収益に貢献できるサービスにしたい」と、次なる一手も検討中だ。
 
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会計シリーズおよび販売大臣で利用可能

 同社は、1980年4月に「大名マイコン学院」として創業した。このパソコン教室には、九州地区の企業に働く多くのビジネスパーソンが、当時の講座で中心テーマだったプログラミング言語『BASIC』を学びにきた。原田社長はパソコン教室を開設した理由について、「パソコンが世の中を変えることを感じていたが、当時、どんなソフト開発をし製品化すれば事業が成り立つのかわからなかった。当パソコン教室では、受講しに来た企業の人から、あらゆるソフト開発の依頼を受けた。いわば、この教室は、創業当時の事業を組み立てていく上でのマーケティングの場だった」と、当時を振り返る。

 受講者から寄せられた開発依頼は多岐にわたった。パソコン用のゲームソフトや制御・組込みソフト、そして、会計ソフトなどだ。そのなかで、当初、収益を支えたのが、医療向けのソフト開発だった。大学や企業の研究開発部門で、たとえば、病理研究用にがん細胞の大きさや個数を把握する画像解析ソフトや、論文発表用のソフトを開発し、その領域でヒット商品を多数出した。
 

創業当時の技術力が生きる

 一方で、会計業務の負担を軽減する目的で、会計ソフトを個別開発し納品するケースも多くあった。いわば、スクラッチ(手組開発)した会計ソフトを提供してきた。原田社長はこの時、「もっとも安定して収益を上げられるのは、業務ソフト」と判断。業務パッケージソフト一本にビジネスの舵を切った。

 1986年に発売した「大臣シリーズ」は、NECのパソコンで一世を風靡した「PC98」にインストールして使うもので、フロッピー二枚分のソフトだった。開発開始から1年でリリースした。この数年前から、競合する業務ソフト会社からは、複数の会計ソフトが販売されていたため、市場で勝ち抜くために一工夫が必要だった。そこで、圧倒的な高速演算を行う増設ボードの付属や、当時としては画期的だったテンキー入力だけで会計処理ができる機能を搭載した。

 現在の「大臣シリーズ」にもある、カナ文字で検索し科目を入力できる機能は、当時の技術が継承されている。原田社長は、「創業当時にあらゆるソフトを依頼に応じて開発し、顧客に喜ばれるシステムを提供してきた。この技術力を今後の新しいデジタルテクノロジーを使ったソフト開発にも生かしていく」と、原田社長の目には次の戦略が映っている。(谷畑良胤)