クラウドビジネスのトップランナーとして、いまやエンタープライズIT市場をけん引する存在になったアマゾン ウェブ サービス(AWS)。強さを支えるのは、「デマンド・ドリブン」の姿勢にもとづき新たな機能を次々に市場投入していく驚異的なスピード感だ。主要サービスのラインアップは100を超える水準になった。すでに巨大ベンダーになった現在でも、ポートフォリオ拡大のスピードは鈍るどころか加速している感がある。アマゾン ウェブ サービス ジャパンは5月30日から6月1日にかけて、日本最大級のクラウドコンピューティングカンファレンスと銘打って、「AWS Summit Tokyo 2018」を東京・品川で開催する。開催直前のタイミングで、ハイスピードで成長・進化を続けるAWSの現在の姿を切り取る。

日本向けニーズにも応えた
クラウドインフラの進化
大阪ローカルリージョンを開設

日本市場向けの
“特別扱い”


アマゾン ウェブ サービス ジャパン
岡嵜 禎
技術統括本部本部長
 まずは、直近のAWSのクラウドインフラの進化をおさらいする。とくに日本市場に影響の大きいトピックとしては、今年2月に「大阪ローカルリージョン」を開設した。ローカルリージョンとして設置されている拠点は、現在のところグローバルで大阪だけであり、日本市場向けの“特別扱い”ともいえる施策だ。

 AWSのクラウドインフラは、「リージョン」(地域)単位で世界中に整備されている。現在、グローバルのリージョン数は18で、国内では2011年に東京リージョンを開設。一つのリージョンは、複数のアベイラビリティ・ゾーン(AZ)から成る。AZとは、複数のデータセンターで構成されるクラウドインフラのロケーションの単位だ。AWSはいずれのリージョンでも、複数のAZを自然災害やデータセンター単位の障害などの影響を受けないよう、地理的に十分離れた場所に配置し、高い事業継続性を実現すべく、複層的に耐障害性の向上に取り組んでいる。なお、東京リージョンのAZは四つで、グローバル全体では54のAZがある。さらに現時点で、4リージョン、12AZの追加も予定している。

 大阪ローカルリージョンは既存の18リージョンとは位置づけが若干異なる。まず、大阪ローカルリージョンは東京リージョンと組み合わせた利用が基本で、単独での利用はできない。そうした利用方法を前提としているため、AZも一つしかない。また、大阪ローカルリージョンは希望するすべてのユーザーが利用できるわけではなく、事前申し込みと審査を経てAWSが許可したユーザーのみが利用できるのも特徴だ。大阪ローカルリージョンから提供するサービスも、「EC2」「S3」といった主要サービスに限られる。

 アマゾン ウェブ サービス ジャパンの岡嵜禎・技術統括本部本部長技術統括責任者は大阪ローカルリージョンについて、「金融、通信、公共などの分野には、コンプライアンス上、地理的な冗長性をもたせつつ国内に閉じたシステムを構築しなければならないユーザーがおり、彼らのニーズに応えた」と説明している。一般的なディザスタリカバリ(DR)のニーズには、東京リージョンの四つのAZで十分に対応できるとしており、大阪ローカルリージョンの用途としては想定していない。
 

EC2のSLAを
99.99%に


 日本市場向けの特例ともいえる措置を打ち出した背景には、基幹システムのクラウド化のニーズをしっかりとつかみたいという思惑がありそうだ。岡嵜本部長は、「従来はクラウドの世界から遠かった金融機関ですら、基幹業務システムのクラウド化を進める傾向が強まっている」と話す。いまだにオンプレミスの割合が高く、クラウド移行に伴う商談の規模も大きくなる傾向がある基幹システムは、クラウドベンダーにとって市場開拓のポテンシャルがいまだに大きい領域だ。AWSも基幹業務システムの構築で豊富な実績をもつ大手SIerとのパートナーシップを強化しており、直近では17年11月に伊藤忠テクノソリューションズをAWSの最上位パートナーである「AWS プレミアコンサルティングパートナー」に認定。AWS プレミアコンサルティングパートナーに名を連ねる日本のパートナーは8社になった。

 インフラ側の機能向上にも取り組んでおり、EC2のSLA(Service Level Agreement)を4年ぶりに変更し、月間のサービス稼働率を99.95%から99.99%に引き上げた。また、EC2の耐障害性向上のための具体的な新機能として、物理サーバーに障害が起こったときに複数のインスタンスが同時に影響を受ける確率を軽減する技術である「Spread Placement Group」を全リージョンで利用できるようにしている。ヴイエムウェアの仮想化技術をAWSのベアメタル上で動かす「VMware Cloud on AWS」も国内での提供開始を控えているが、これも基幹業務システムのクラウド移行ニーズに応えるものだ。「AWSは常にユーザーのデマンドにもとづいて機能開発をしている」という岡嵜本部長の言葉どおり、潜在的な市場も見据え、貪欲に機能向上に取り組み、トップベンダーの座を盤石なものにしようとしている。

 

AWSはクラウドジャーニーの
全行程を支援する
クラウドをクラウドらしく使いたい顧客が増えている

1Qは売上高が前年同期比49%成長


AWSのビジネスのアップデート

 
アマゾン ウェブ サービス ジャパン
今野芳弘
パートナーアライアンス本部本部長
今野 ご存じのとおり、アマゾン、AWSはとにかくイノベーションを一生懸命やる会社です。例えば、レジレスのコンビニである「Amazon Go」もついに一般公開しましたが、AI、IoT関連などさまざまなAWSの技術をフル活用しています。AWSのAI/マシンラーニングサービスは、アマゾンが培ってきたAIのナレッジや技術をお客様と共有したものであり、アマゾンがユーザーとして使い倒しているというのが大きなポイントです。

 AWSのビジネスはおかげさまで順調に成長しており、2018年度(18年12月期)の第1四半期も前年同期比で売上高は49%成長し、年内には200億ドルに達する見込みです。日本でも10万以上のお客様がいらっしゃいます。直近のトピックとしては、グローバルで金融機関でのAWS利用が拡大している傾向がありますね。また、累計で65回以上値下げをして利益をお客様に還元する姿勢を貫いていることもぜひ多くの方に知っていただきたいです。
機能、サービスの開発状況について

今野 2017年に、新しい機能、サービスを含めたイノベーションの数は累計で1400を超えました。主要サービスの数も100を超えていて、IoTプラットフォームやビッグデータ、リアルタイム分析のためのサービス群、サーバーレスコンピューティングサービス、音声認識、テキスト読み上げ、画像認識・分析、機械学習といったAI関連サービス群など、ポートフォリオは拡大し続けています。また、DevOpsを支える開発・運用支援のサービスなども近年デマンドが大きくなってきています。
 

金融分野でのニーズが急増


国内市場におけるビジネスの状況

今野 まず、クラウドをクラウドらしく使いたいというお客様が増えています。それに伴い、クラウドの特徴を生かした提案ができるパートナーが強く求められるようになっています。パートナーもそれを理解して、経験値を上げようとしています。

 AWSとしては、ユーザーがITやクラウドのメリットを余すところなく享受してデジタルトランスフォーメーション(DX)を実現するには、段階を踏む必要があると提言してきました。新しいビジネスのための新しいシステムなら最初からクラウドネイティブで考えてAWSを使えばいいわけですが、既存のシステムがある場合はそうもいかない。まずは、個別プロジェクトの課題解決のためにAWSを使いはじめ、次の段階でクラウドの長期利用に向けたシステムのインテグレーションと基盤の再構築を行い大規模なクラウド移行を実現する。ここまでをITトランスフォーメーションと定義し、その次の段階で、クラウドネイティブなIT活用によりビジネスにイノベーションを起こすDXが実現できるということです。これらのプロセスを、「クラウドジャーニー」と呼んでいます。

 顧客のクラウドジャーニーを成功させるためには、パートナーにもITトランスフォーメーションとDXの両方のノウハウが必要になるわけですが、DBのマイグレーション案件、AI活用、IoTソリューション案件など、お客様側のニーズはすべてのプロセスで増大しており、経験値を上げるための環境も整っていますし、大きなビジネスチャンスがあります。

 インダストリーの観点では、とくに金融系のお客様のニーズが拡大しています。メガバンクはもちろん、地銀のお客様も非常に増えています。なかには、勘定系まで含めてパブリッククラウドへの移行を検討されるお客様も出てきています。

 また、新しい商材としてはクラウド型コールセンターソリューション「Amazon Connect」の引き合いも多くなっています。コールセンターも季節ごとに負荷変動が大きいですから、キャンペーンの時だけ使うというニーズも大きいようです。現在、APACではシドニー・リージョンのみですが、東京リージョンからも提供できるよう急いで準備を進めています。
 

昨年比でパートナーは130社増


パートナーエコシステムの現状

今野 AWSのパートナービジネスは、AWSの平均成長率をはるかに超える水準で成長しています。今年3月現在で、SI系の「コンサルティングパートナー」は223社、ISV系の「テクノロジーパートナー」は315社で、昨年比で両方を合わせると130社増えています。

 新しい業種や、デバイス関連のパートナーも増えていますし、超大手の顧客向けのSIビジネスから中小企業向けビジネスまで、案件の規模を問わずAWSの活用は広がっているという手ごたえがあります。

 また、ISVパートナーがAWSを使って自社製品のSaaS化を進めている例も非常に増えています。いずれにしても、自社の強みを生かしてAWSを活用した成長プランを真剣に検討し、エンジニアの育成にも積極的に取り組んでいるパートナーが増えています。

AWS Summit Tokyo 2018のみどころと来場者へのメッセージ

今野 キーノートやブレークアウトセッションで、非常に多種多様なユーザー事例を披露いたします。AWS側が話すだけでなく、お客様に登壇いただき、お客様の目線で事例をご紹介いただくケースも多いので、より客観的にAWSを使うメリットを評価していただけると思っています。また、基礎から上級者向けまで、テクニカルセッションも多数用意していますし、トレーニングや認定試験の場もありますので、新しいスキルの習得にも役立てていただけます。

 AWSはクラウドジャーニーのどの段階にいるお客様に対しても、価値あるサービスを提供していきます。クラウドジャーニーの各プロセスでつまずきそうな課題を解決できるベストプラクティスとプログラムもありますし、クラウドでないとできないDXの世界でイノベーションを実現できるサービス群もあります。その価値をAWS Summit Tokyo 2018でぜひ体感していただきたいです。