富士ソフト(坂下智保社長)は、医薬品の製造販売を手がけるツムラ(加藤照和社長)のサーバー更改を支援する。同社で稼働しているほぼすべてのサーバー約1000台を「Amazon Web Services(AWS)」上に移行する計画。2019年10月の完了を目指す。

(写真右から)伊藤丈貴・ソリューション事業本部インフラ事業部クラウドソリューション部部長、
宮元大志・ソリューション事業本部副本部長兼インフラ事業部事業部長、
田中基敬・ソリューション事業本部インフラ事業部クラウドソリューション部
クラウドソリューショングループ課長

 ツムラでは、法規制の観点から現地でのデータ保管が求められる中国拠点など一部を除き、ほぼすべてのサーバーを千葉県の情報センターで統括管理している。仮想サーバー972台、開発者向けデスクトップを150台保有するほか、バックアップ環境もオンプレミスで運用。しかし、現行システムでは、状況に応じて柔軟にリソースを増減したり、最新技術を迅速に取り入れたりすることが難しかった。そこで、更改にあたりパブリッククラウドの採用を検討した。

 医薬品業では、基幹系を含む全システムをパブリッククラウド上に移行した例が少ない。その理由の一つとして、厚生労働省医薬食品局の「医薬品・医薬部外品製造販売業者等におけるコンピュータ化システム適正管理ガイドライン」(薬食監麻発1021第11号)への準拠がある。ITインフラを変更する際には、従前と同等の製品を製造できることを担保しなければならない。一方、AWSでは、ガイドラインに適応するリファレンス文書の提供を16年に開始しており、これが今回の採用の決定打になった。

 また、中国子会社では、17年に施行された「サイバーセキュリティ法」を受けて、現地でのデータ保管が求められるが、AWSは北京リージョンを開設しており、対応が可能だった。加えて、コストも抑えられた。従来比で多少のコスト削減であれば、使い慣れたオンプレミスにとどまるという選択肢も検討の余地はあったが、ツムラの池田圭子・情報技術部ITリテラシー課課長は、「(試算で)はるかに上回る衝撃的な数字が出ていた」と語る。

 サーバー移行を任せるベンダーは、数社を検討し、富士ソフトに決定した。クラウド関連で約2000人の技術者を抱えているほか、製造業のシステムを深く理解していること、AWSの日本市場への進出時からのパートナーで、中国でもパートナー認定されており、実績が豊富なことなどを評価した。富士ソフトの伊藤丈貴・ソリューション事業本部インフラ事業部クラウドソリューション部部長は、「単純なサーバー移行だけでなく、アプリ改修や中国対応、その後の保守など、トータルでサポートできることを提案した」と振り返る。

 ツムラの大門裕典・情報技術部部長は、今後について、「現行システムをクラウド環境に移行して、安定稼働することが当面の目標だが、ソリューションベンダーとしてAWS移行後の最適化によるコスト削減や、AIやデータベースサービスの活用など、経営や業務に付加価値をもたらす提案、サポートを期待している」とした。(真鍋武)