アクセンチュアは8月1日、データに基づくESG経営を支援するAIソリューションに関する記者発表会を開催し、日本におけるESG経営の問題点と九州大学都市研究センターと共同開発した「AI PoweredEnterprise Value Cockpit(AIP ECVC)」の概要を説明した。
ESGを企業戦略の中心とする動きはグローバルで加速しており、日本市場においてもESG投資額の年平均成長率は320.1%と伸長している。同社の保科学世・ビジネスコンサルティング本部AIグループ日本統括AIセンター長は、ESG戦略の重要性を認めつつも、「企業価値向上につなげられていない」と指摘し、「自社の立ち位置や不足している要素が分からず、どんなESG施策をすべきなのか把握できていない。また、ESG施策によって得られる企業価値をステークホルダーに伝えられていない」と述べた。
保科学世・AIセンター長
こうした問題を解消し、ESG経営を支援することを目的に開発されたのがAIP ECVCだ。ESG戦略が企業価値にもたらすインパクトを予測・分析、さらには成長につながる施策を提示するというもので、単独でも提供するが、同社のコンサルティングや他のAI Poweredサービスと連動させることでより高精度のデータ主導型経営をサポートする。
「AI PoweredEnterprise Value Cockpit」の全体像
(アクセンチュア配布資料を引用)
AIP ECVCにインプットされているのは、日経225構成銘柄(12年分、468銘柄)の財務データや非財務データだ。これらを環境・社会・ガバナンス・財務の各因子の観点から分析。時価総額との因果関係を明らかにし、各種指標の影響度を可視化する。企業規模や市場要因を切り離すことで、業界や規模を問わず幅広い企業に適合するよう設計されているのも特徴だ。
記者発表会では、AIP ECVCによって導き出されたデータの実例も紹介された。まず、日本の企業全体を対象にした場合では、企業価値に影響度の大きい非財務指標として、女性登用やLGBTに対する姿勢が上位にあがった。これはAIP ECVCの分析因子でいえば社会指標にあたる。肝心のESG施策を指す環境指標はというと、まだ影響力が小さく、日本では十分に評価が得られていないことが分かった。
アクセンチュア配布資料を引用
しかし、業界によってはESG施策が功を奏している場合もある。AIP ECVCの分析によると、サービスや医療医薬・バイオ、小売といった業界では、他の業界と比較して環境指標が企業価値を押し上げる要因になっていた。ESGの取り組みが遅れている業界でも、株主が一部の先行企業を高く評価しているとの結果が出た。
アクセンチュア配布資料を引用
個社の場合、自社のESG戦略が企業価値にもたらした影響を時系列の推移で表示し、時価総額の変動が財務要因によるものなのか、あるいはESG施策を含めた非財務要因によるものなのかを分析することができる。時価総額の目標値から逆算して各因子の目標を設定したり、業界内の競合他社と比較してどの立ち位置にいるのかを可視化したりといった使い方も可能だ。
個社分析のインターフェース
今後は海外データや有価証券報告書の記載内容など定性的データの取り込みも検討しており、グローバル規模で精度の高いシミュレーターを目指すという。また、提示するESG戦略の確度を高めるためのAIレコメンデーション機能強化やESG評価スコアの提示、製品・サービスレベルでのESG改善アクションの提示にも意欲を示した。(大蔵大輔)