日本コンピュ-タシステム販売店協会(JCSSA)は12月6日、毎年恒例のIT事業者向け「経営戦略オープンセミナー」を都内で開催した。今年は「JCSSAでしか聞けない!IT事業者向け政策と技術の最新動向 デジタル関連政策からクラウド産業戦略までの最前線」をテーマに設定。経済産業省や大手クラウドベンダーの幹部らによる講演などを通じて、ITビジネスに役立つ情報を参加者に提供した。
(齋藤秀平)
経済産業省商務情報政策局の和泉憲明・アーキテクチャー戦略企画室長は「『デジタル産業の創出と社会インフラ整備に向けた産業戦略と政策展開』-DXレポートの最新版やDX推進の国内外動向を含めて-」と題して基調講演した。和泉アーキテクチャー戦略企画室長は、サーバーやPCのビジネスでは、ITベンダーはモノやソフトウェア、エンジニアを提供してきたが、これからはエンドユーザーのビジネス構造の変化に伴い、サービスとして提供することが必要になってくるとの見通しを示し「サービスを通じてデータを集めて、よりよいサービスにつなげていく足し算のDX」を意識することが大切とした。
パネルディスカッションに参加する(左から)日本マイクロソフトの伊藤信博・パートナー技術統括本部長、グーグル・クラウド・ジャパンの長谷川一平・SMB事業本部長、明治クッカーの西原亮社長、経済産業省の和泉憲明・アーキテクチャー戦略企画室長
一方、新型コロナ禍の影響については「市場は動いているが、需要を先食いしているだけの可能性がある」と指摘。「変えないといけなかったのに、変えなかったがために、市場が正常に戻ったときに再起不能になることがリーマン・ショックのときに相当起きた」とし、同じ轍を踏まないようにしっかりと変革に取り組むべきと主張した。
その後のビジネスセッションでは、日本マイクロソフトの業務執行役員で、パートナー事業本部の伊藤信博・パートナー技術統括本部長と、グーグル・クラウド・ジャパンの長谷川一平・SMB事業本部長が「クラウド事業者の最新動向と国内市場」をテーマに自社の戦略などを説明した。
グーグル・クラウド・ジャパンのセッションには、牛乳宅配などを手掛ける明治クッカー(千葉県市川市)の西原亮社長も登壇。「Google Workspace」によって業務効率化を実現した自社の事例を紹介し「地域の中小企業にとって、自分たちだけで開発を進めることは荷が重い。マネジメント層と並走する改革推進のパートナーは非常に求められているので、JCSSAの会員には、一緒に業務を見直して売り上げを向上させたいとのメッセージを中小企業に出してもらえると心強い」と語った。
また、和泉アーキテクチャー戦略企画室長を進行役とする3社によるパネルディスカッションもあり、伊藤パートナー技術統括本部長は、クラウドビジネスでのパートナーの役割について「クラウドの世界は売って終わりではなく、お客様に提案した後、利用料が増えていったほうがいい。それを実現するためには、使い方の観点でお客様に寄り添い、一緒に学んでいくことが大事だ」と話した。
昨年に引き続きリアル会場とWeb配信で開催し、計220人が参加。開会のあいさつでJCSSAの林宗治会長は「われわれの業界は多くの共通課題があるが、1社だけで解決するのは難しい」と述べた上で、業界全体を巻き込んで解決策を模索できるできることにJCSSAの価値があると強調した。