4月1日付で弥生の新社長に就任した前山貴弘氏は4月5日、メディアとの懇談会に出席した。2008年4月から15年間、経営のかじ取りをした岡本浩一郎前社長からのバトンについて「大変重い責任を感じている」とし、ユーザーに対して「良質なサービスをより速く提供していく」と抱負を語った。今後はクラウド版の強化に注力する考えを示し、「新たな世界観をきちんと示す」と強調した。
(齋藤秀平)
前山社長は、これまでの15年間について「ユーザー数が格段に伸びて、従業員と売り上げも増え、企業価値も大きくなり、実りある15年だった」と評価し、「大きな功績をもたらしてくれた存在(岡本前社長)からバトンを受け取ることには大変重い責任を感じているが、これからの新しい未来に向けて大変わくわくしている」と述べた。
(左から)前山貴弘新社長と岡本浩一郎前社長
公認会計士と税理士の資格を保有する前山社長は、弥生の会計事務所パートナー(弥生PAP会員)として弥生製品を使用し、顧問先に提供してきた経験がある。懇談会では、07年に弥生に入社した後、いったん退職して20年に再び入社した経緯を紹介。自身については「弥生のファン」であり、「会計や販売管理、給与計算のソフトが大好き」とし、「ユーザー目線に立ち、ニーズに応える製品・サービスをクイックに出していきたい」と話した。
クラウド版については「データ同士がつながり、新たな価値を生み出すクラウドの良さについて、われわれの製品ではまだ道半ばのところがある」とし、今後の発展の方向性として「ピュアクラウドで新たな製品を出すことに着手している。すべてがつながり、自動化される世界で、人が確認・修正していくというこれまでとは全く違った情報のつくられ方を目指す」と紹介した。
自社の課題に関しては「多くのお客様に製品を使い続けていただき、安定した状況を維持していきたいというモードに入ってしまっている」との見方を示し、「新しいものを生み出すためのパワーをきちんと使えておらず、結果としてスピード感が少し足りなかった」と指摘した。
懇談会には岡本前社長も出席し、「上を望めばきりがないが、しっかりと成長することができた」とこれまでの道のりを振り返り、社長交代のタイミングについては「希望としては、山を越え、比較的平たんな地に行ったときにバトンを渡したいと思っていたが、結局、平たんな道は永久にこない」とし、10月に始まるインボイス制度を挙げながら「これからの1年間は非常に大変な年になるが、やるべきことをやれば、確実に成果が伴う1年でもある。このタイミングでバトンを渡すのは一つの選択肢だった」と語った。
前山社長については「チャーミングで、誰からも好かれるタイプ。なおかつ会計の専門家で、会計ソフトへの愛が非常に強い。われわれがものづくりをしていく上で、提供する製品やサービスへの思い入れはすごく大事なので、安心してバトンを渡せる」とした。