生成AIをめぐる動きが各社で活発になっている。アマゾン・ウェブ・サービス・ジャパン(AWSジャパン)は、国内企業を対象に大規模言語モデル(LLM)の開発支援プログラムをスタートする。NTTデータは、生成AI活用をグローバルに広げる取り組みを発表。パナソニックコネクトは、社内での具体的な生成AIの活用状況を取りまとめ、業務効率化に一定の手応えを示した。
(大畑直悠、大向琴音、堀 茜)
AWSジャパンは7月3日、国内の企業・団体によるLLMの開発を支援する「AWS LLM 開発支援プログラム」を発表した。参加企業を7月21日まで募集し、最大10社程度の企業を採択する予定。8~11月にかけて参加企業のLLM開発を支援し、国内企業に最適なLLMの開発を推進する考えだ。
プログラムの参加対象者は、数十億~1千億パラメーター以上の規模のLLMの開発に今後取り組むか、すでに取り組んでいる国内の企業や団体。参加者が望む技術要件に応じて、AWS上での適切な計算機リソースの選定・確保のためのガイダンスを提供するほか、AWS上で事前学習を実施する際のクラスター管理や、分散学習におけるネットワーク性能の最適化などを支援する。開発したLLMを同社が運営するマーケットプレイス「AWS Marketplace」に掲載するなど、ビジネスでの活用も後押しする。
資金面では、事前学習にかかるコストの一部を負担し、プログラム全体で600万米ドル程度を投資するという。
AWSジャパン 長崎忠雄 社長
同社の長崎忠雄社長は「プログラムは日本独自の取り組みだ。われわれが歴史的に重視してきた顧客の課題を聞く力を反映させた」と強調した。
NTTデータは6月29日、生成AIの活用をグローバルで推進する「Global Generative AI LAB」を設立したと発表した。生成AIのソフトウェア開発分野への適用や関連ソリューションの展開、ラボ活動、ガイドラインの策定について、グローバルで取り組む。
具体的には、欧州・中東・アフリカ・中南米地域を統括するNTT DATA EMEALが提供している文章検索ソリューション「Dolffia」やチャットボットソリューション「eva」を同地域以外へ展開するほか、文書読解AI「LITRON」と生成AIを連携した新サービス「LITRON Generative Assistant」を提供する。
LITRON Generative Assistantは、社内規定や業務関連資料、外部の公開データなど、さまざまなデータを基に回答文を作成できる。まずは社内で活用し、得た知見を顧客に提供することで、生成AIを活用するためのコンサルティング業務を推進するとしている。
ラボ活動では、各拠点のノウハウの共有や、将来的に登場する可能性がある新たなAIの調査検証に加え、NTT研究所が開発する生成AIモデルを活用し、顧客との共創を目指す。ガイドラインを策定し、AI関連技術の安心安全、迅速な活用も推進する。
NTTデータ技術革新統括本部技術開発本部イノベーションセンタの古川洋・センタ長は「安心安全に使っていただけるように、積極的なAI活用の推進と、AIガバナンスの徹底の両面で取り組んでいきたい」と述べた。
パナソニックコネクトは6月28日、社内向けに展開しているAIアシスタントサービス「ConnectAI」の活用状況を説明した。この中でIT・デジタル推進本部戦略企画部の向野孔己・シニアマネージャーは「これまで9時間かかっていた社内広報業務がわずか6分で可能になった事例や、3時間かかっていたプログラミング業務を5分に短縮した事例も生まれており、大幅な業務効率化につながっている」と話した。
同社は今年2月から、生産性向上や社員のAI活用スキルの向上を目的に、米OpenAI(オープンエーアイ)が提供する「ChatGPT」をベースとし、社員の不適切な利用にアラートを出す仕組みを設けたConnectAIの利用を開始。現在、1日当たり5000回以上使われているといい、向野シニアマネージャーは「社員が日常的に業務に利用しており、想定外の有効利用実績も生まれている」と語った。
次の段階として、9月に同社の固有情報に回答できる自社特化型AIの試験運用を始める。また、社外秘情報に対しても回答できる仕組みを本年度中に構築し、カスタマーサポートで活用する予定だ。