カスタマーサービスプラットフォームを提供する米Zendesk(ゼンデスク)のAIを活用した顧客対応機能「Zendesk AI」の国内利用が好調だ。5月のサービス発表以来、生産性向上が評価され、想定を上回るペースで契約が伸びている。日本法人は、さらなる拡販のため、販売パートナー網の拡大など間接販売に注力する。
Zendesk AIは、自社開発した大規模言語モデルを顧客対応に特化した内容で事前学習させたAI。ゼンデスクはグローバルで年間3.2兆トランザクションの顧客対応をしており、契約企業とユーザーのやり取りの十数年分のデータを、個人情報を除いたかたちで教師データとして活用した。実際の問い合わせデータを学習しているため、AIの回答精度が高いのが特徴だという。日本語認識の精度については、国内で利用している数千社のデータを活用しており、英語と変わらないとしている。
冨永 健 社長
AIは、問い合わせのテキストに対し、オペレーターに回答案を提示。オペレーターは内容を確認し、必要があれば加筆して返信する。オペレーターが個別に回答を作成するより大幅な工数削減と返答のスピードアップが期待できる。効率化の例として、英国の小売企業が利用し、顧客対応のトータル処理時間を11%削減、返信時間を73%短縮し、顧客満足度が9%向上した事例がある。
現在対応する業種は、小売り、Eコマース、ソフトウェア、金融サービスの四つ。今年後半には、社内ヘルプデスクや観光、ホスピタリティ業界、ゲーム業界にも対応する予定。
日本法人の冨永健社長は「顧客満足度向上と業務効率化がAIによって同時に実現できる」と機能の有用性をアピールする。
Zendesk AIは、同社の顧客対応ソリューションを契約していれば、オプションとして月額1席50ドルで利用できる。1カ月間無料トライアルで機能を確認することができ、トライアルを利用した多くの企業が契約。企業規模に関わらず顧客対応を効率化できるため、大企業から中堅・中小企業まで幅広く採用されている。「リリースから1年で既存顧客の3割に広めたい」(冨永社長)とする目標を上回るペースで利用が進んでいるという。
日本法人の販売パートナーは15社。冨永社長は「ここ数年でようやくパートナー網の整備が進んだが、まだまだ拡大していきたい」とする。販売パートナーと共同でマーケティングイベントを開催するなど支援を強化しており、大企業を中心に間接販売の比率を高めていく方針だ。
(堀 茜)