日本HPは1月18日、2024年の事業戦略説明会を開催した。岡戸伸樹社長は、AIを使った新しいサービスやソリューション提供に注力するとして「AIを搭載したAI PCの市場を立ち上げ、AI PC元年として当社のブランドを確立したい」と意気込みを語った。同日は、AI PCの先駆けと位置付ける新製品として、AIテクノロジーを内蔵したプレミアムノートPC「HP Spectre x360 16」「HP Spectre x360 14」とゲーミングノートPC「OMEN Transcend 14」の3製品を発表し、販売も開始した。
(堀 茜)
岡戸伸樹 社長
24年のPC市場の見通しについて岡戸社長は、「AIが市場を拡大していき、PCの新しい市場をつくる記念すべき年になる」と説明。同社はPCをパーソナルコンピューターからパーソナルコンパニオンと再定義し、AIの出現によってテクノロジーがより身近な伴走者として人々を支援するようになるとの考えを示した。
「ChatGPT」に代表されるような生成AIは、クラウドベースで利用されているが、「AI PCによってエッジ側でAIの処理ができる時代が到来する」と展望。より多くの処理をエッジで行なえるようになることで、レイテンシーやデータの安全性、エネルギー効率、コストといったさまざま課題を解消できると説明した。エッジAIの活用で、処理スピードはクラウド経由より5倍高速化し、コストは最大80%削減できるとのデータも紹介。将来的にグローバルでAI PCの普及率が40~50%になるとの考えを示し「AI PCの市場を切り開くカタリスト(触発者)になりたい」と意気込んだ。
同日発売したPCの3機種は、同社初のAIテクノロジー搭載モデル。PCがパーソナルコンパニオンとして個人に寄り添ったサポートをするスタートの製品と位置付けた。
HP Spectre x360シリーズは、推論の演算に特化した高速化回路であるNPUを組み込んだ次世代CPU「インテルCore Ultraプロセッサー」と、一部モデルに搭載の「NVIDIA GeForce RTX 4050 Laptop」による三つのエンジン(CPU、GPU、NPU)により、現在利用可能な最新のテクノロジーを実装。写真やビデオ編集でより高速なコンテンツ制作が可能となる。AI機能を利用することで、ユーザーが離れたら画面を自動ロックし、戻ったらスリープを自動解除する機能を装備するほか、第三者ののぞき見を警告するプライバシーアラートも内蔵する。
OMEN Transcend 14は、最大スペックでの構成時「インテルCore Ultra 9 185Hプロセッサー」と「NVIDIA GeForce RTX4070 Laptop」を搭載。最新のゲームや、CPUの演算負荷の高いタスクを快適に処理できる。
同社はAI以外の24年の注力領域として、▽ハイブリッドワーク支援▽サプライチェーンを通じたサステナビリティへの取り組み▽3D印刷などのプリンティングソリューション-を挙げた。ハイブリッドワークは、eSIMを内蔵したり、セキュリティ機能を向上させたりしたハードウェアに加え、周辺機器やサービスも加えた包括的なソリューションを提供する。サプライチェーンでは、カスタマイズ製品の製造を東京都日野市の工場で行い、受注から5営業日で出荷する体制をさらに強化し、ライフサイクル全体で環境負荷の軽減を推進する。デジタル印刷では、オンデマンド印刷の需要に対応したワークフロー管理で、顧客の業務拡大を支援する。