伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)は2月21日、米マサチューセッツ工科大学発のAIソフトウェア開発スタートアップである米Liquid AI(リキッドエーアイ)との協業を発表した。リキッドエーアイは極めて少ない計算資源で高度な処理が可能なAIソフトを手がけており、CTCでは自動車やドローンといったエッジコンピューティングの分野や、省電力・省スペースのAIエンジンの開発、外部ネットワークと接続していない閉じた環境でのAI活用といった用途を見込む。
(右から)CTC米国法人の田中匡憲CEO、
リキッドエーアイのラミン・ハサニCEO、CTCの五十嵐知宏・部長代行
リキッドエーアイは従来約10万個のニューロン単位を必要とする機械学習モデルを、わずか19個のニューロンで同等の結果を得ることに成功。2023年に会社を設立して、AIソフト製品のLiquid AIの開発キットや、外部に学習データを持ち出せないユーザー企業に向けたライセンス販売などを始めている。リキッドエーアイ共同創業者のラミン・ハサニCEOは「小動物や虫のニューロンに着想を得て、計算結果を常に検証できるホワイトボックス型のAIを開発した」とし、大規模かつブラックボックス化したAIと一線を画すものだ話した。
CTCの五十嵐知宏・DX企画推進部部長代行兼オープンイノベーション課長は「限られた計算資源しかない自動車やドローンの自動運転といったエッジ端末分野への応用や、大規模なGPUサーバーが必要で、かつ大電力の消費が課題となっている現行の生成AIの課題解決につながる」と期待を寄せる。従来の数千分の1の計算資源で同等の結果を得られるとすれば、同じ計算資源でより高度なAIシステムの開発が可能になる。
まずはCTCグループ内で実際に使って検証するとともに、ユーザー企業とも協力して事例や実績づくりに取り組む。CTC米国法人の田中匡憲プレジデント兼CEOは、今後も先進的なスタートアップ企業との協業を進める」と、将来成長が期待できるスタートアップの技術を使った実績づくりに力を入れる。リキッドエーアイの社名は「液体のように柔軟なAI」が由来。(安藤章司)