NTTコミュニケーションズ(NTTコム)は4月9日、メディア向けに説明会を開き、モバイル通信機器に搭載するSIMの中にユーザー独自のアプリケーションを実装できる「アプレット領域分割技術」のユースケースについて説明した。複数の通信キャリアを自動的に切り替えて通信できるサービスの提供や、機微情報を扱うセキュアな端末を低コストで実現することなどが可能になる。同技術の活用によって、IoTソリューション向けのサービスの拡充を図る。
SIMの内部には、通信のために用いる「通信プロファイル領域」に加えて、それ以外の情報を書き込める「アプレット領域」が用意されている。通常のSIMは両方の領域を通信キャリアが管理しているため、ユーザーがアプレット領域を利用することはできないが、アプレット領域分割技術を搭載したSIMは、通信プロファイル領域のみNTTコムが管理し、ユーザーであるIoT事業者などはアプレット領域に通信以外の機能を独自に実装できる。
村田一成 主査
同技術を利用するメリットとして、NTTコムは「高可用性」「機微情報の安全な取り扱い」などを挙げる。高可用性を実現できるユースケースとして、現在NTTコムが商用サービスとして提供中の「Active Multi-access SIM」を紹介。メインキャリアの通信回線が故障した際にサブキャリアへ自動的に切り替えるサービスで、故障の判定や回線の切り替えはSIM内のアプレットが行うため、IoT端末側に通信監視などの機能を実装しなくてもよいのが特徴。
機微情報の安全な取り扱いに関しては、パートナー企業であるアイティアクセスのクラウド型決済端末を紹介した。個人情報や支払い情報などの機微情報は、従来は決済端末内の保存領域内で処理していたが、アプレット領域分割技術の採用によってSIM内で処理することができるようになった。決済端末自体にセキュリティーレベルの高い保存領域を設ける必要がなくなったため、決済端末の製造コストを下げる効果が得られたという。
5G&IoTサービス部IoTサービス部門の村田一成・主査は「アプレット領域を活用していただくことで、SIM自体に新たな付加価値を持たせることができる。課題の解決や新たなビジネスモデルの創出に期待している」と述べ、パートナー企業と連携して同技術を搭載するSIMのユースケース拡大を目指すとした。
(大向琴音)