日本HPは9月10日、販売パートナー向けのイベント「HP Partner Communication 2024」を札幌市で開催した。生成AIのビジネス活用に注目が集まり、同社も「AI PC」の普及に注力する中、生成AIがもたらす価値や人間との共存の意義について講演が行われた。また、GIGAスクール端末の更新に向け、自治体に対しベンダーが求められるアプローチについても専門家がアドバイスした。
冒頭で、同社パートナー営業統括の小林宗洋・執行役員があいさつした。NPUなどを搭載し、AIワークロードをエッジ側で実行可能にするAI PCの拡販に注力していく方針に触れ「AIの市場は、これからパートナーの皆さんと一緒に作っていくものだと思っている」と説明。AI PCを使うことで、どれだけ生産性を上げられるか、利便性が向上するかといった点を顧客に訴求することで需要を喚起していきたいとして「この分野でパートナーの皆さんと一緒に成長してきたい」と意気込みを語った。また、GIGAスクール構想で2020年から導入された教育向け端末の更新については、10月にGIGA端末の販売戦略の発表を予定していることを紹介し「公共への営業を担当されている方は、いろいろな提案をしていただける」として、シェア拡大への協力を呼びかけた。
日本HP
小林宗洋
執行役員
生成AIの活用は不可欠に
基調講演では、東京大学薬学部の池谷裕二・教授が登壇。脳科学者としての立場から、生成AIを巡る最新動向と、AIと人が共存する際のポイントについて話した。池谷教授は、グローバルで各社が発表している生成AIの最新モデルについて、それぞれモデルごとに異なる特徴があると指摘し、得意とする分野や性能のランキングについて解説。自身は、検索AIや画像生成AIなど常に仕事で生成AIを活用しているとして「一番よく使うのは、アイデア出しをする時」だとした。米OpenAI(オープンエーアイ)が提供する生成AI「GPT-4」より創造性が高い人間は9.4%にとどまるとのデータを示し「生成AIは便利で画期的で、仕事のやり方を大きく変える産業革命のポイントだ。使わない手はない」と述べ、ビジネスパーソンに活用は不可欠だと呼びかけた。
東京大学
池谷裕二
教授
池谷教授は、いずれAIが代替できることとして、▽創造▽発想▽芸術▽気遣い―などを挙げた。画面越しに患者が医師、生成AIとそれぞれ対話し、患者の感想を点数化したところ、生成AIの方が医師よりも会話の質や共感力が高いという結果が出たことを紹介。また自身が生成AIが搭載された会話アプリと対話した録音データを披露し、「生成AIの共感力は高く、自分を分かってくれていると思える」と述べた。
一方で、「人間にしかできないこともたくさんあり、それは人が苦労せず自然にできていることだ」と指摘。楽しんで生きることや、話題を転換できることは人間の脳ならではの特性だと説明した。人の記憶は、ただ正確に覚えているのではなく、将来役立つようなかたちに無意識に書き換えられる「汎化(はんか)」という機能を持っているとして、「思い込みを難なくするのは、生成AIにはできず、認知の早さは人間の脳のすごいところ」と解説。「人間とAIでは得意分野が違うことを理解した上で、コラボレーションの姿勢が重要になる」と述べた。
自治体担当者に有意義な情報提供を
GIGA端末の更新に関連して、教育ICT政策支援機構の谷正友・代表理事が講演。自治体の教育委員会での勤務経験などから、学校現場のデジタル化の課題と、端末更新に当たってベンダー側に求められる役割について話した。前回のGIGA端末は市区町村単位での調達だったが、今回は都道府県ごとの共同調達方式が採用されている。複数の自治体で共同調達のコーディネーターを務めているという谷代表理事は、現状について、域内の市町村が参加した会議で調達仕様を決める必要があるが、市町村によって方針やデジタル化の進ちょくにばらつきがある点が課題だとして「遅れているところに合わせるのではなく、進んでいるところに合わせる体制を整える必要がある」と指摘。「重要なことは、目指すべき学びの姿を実現するための端末を選ぶという点になる」と強調した。
教育ICT政策支援機構
谷 正友
代表理事
谷代表理事は、自治体でGIGA端末を担当する教育委員会には、ITやICTに詳しい人材がいないことが多いと説明。「提供側の皆さんは、端末やソフトウェアの選択によってどんなことができるようになるのか、トータルコーディネートでいいかたちを提案してほしい」と提言。販売側にとっては案件が増える可能性があるとして、定期的に自治体担当者とコミュニケーションを取る中で、有意義な情報提供をすることを呼びかけた。
パートナー向けサイトに登録を呼びかけ
日本HPは、パートナー向けに情報提供しているサイト「HPパートナーナビ」について、営業活動に必要な情報をまとめているとして登録を呼びかけた。顧客への提案に必要な資料やキャンペーンの情報などを一覧でき、他社との製品比較も容易にできるなど機能を紹介した。
会場では、同社の法人向けPCやワークステーションなどが展示され、参加者がスタッフに性能などを質問する様子も見られた。
同イベントは全国7カ所で開催しており、9月18日には金沢市で実施する。
会場ではPCやワークステーションなど法人向け製品の最新モデルを展示してパートナーに説明した