アイルランドAccenture(アクセンチュア)の日本法人は12月4日、記者説明会を開き、今後の注力領域を説明した。生成AIエージェントを全従業員のパートナーとして活用し経営の高度化を目指す「デジタル・ツイン・エンタープライズ」を推進すると表明し、自社内での取り組みなどを紹介した。アクセンチュアのアジアパシフィック共同CEOを兼務する日本法人の江川昌史社長CEOは「個人の分身として生成AIエージェントを活用し、業務を半自動化することが、3年後には普通になるだろう」と展望した。
江川昌史 社長CEO
デジタル・ツイン・エンタープライズは各従業員が生成AIエージェントを活用することで定型業務の代替に加え、営業や購買、生産といった専門性を持った各エージェント同士が対話しながら調整業務などを担い、企業全体の最適化を目指す世界観。経営層のエージェントを必要に応じて呼び出し、デジタル空間上で対話しながら意思決定を行ったり、中期計画や重点施策に合わせた組織設計を自動で考案したりする仕組みの構築などが可能になるとした。
これを実現する上では、企業内で利用する情報システムやプロジェクトのデータに加え、一人一人の社員の日々の作業の中で発生するデータを、リアルタイムに近いかたちで取得・蓄積し、デジタルツインとして利用できるようにする。
生成AIを活用した経営の変革は自社内でも推進しているという。同社は全社員が活用し、各プロジェクトやシステムのデータを集積する基盤「ピアワーカー・プラットフォーム(PWP)」を構築。同基盤上で、社員が作成した3300を超える生成アプリケーションが利用されており、このうち250以上は共有アプリとして公開されている。また、PWP上のアプリの活用などで業務をサポートする生成AIエージェント「PWPバディ」を一部の社員が利用しているといい、2025年春には全社員に展開する計画だ。
生成AIの全社的な活用には、社員のリスキリングが重要になるとの見方も示した。江川社長CEOは「デジタル・ツイン・エンタープライズで生成AIとの連携を進めれば、多くの既存業務が削減されるだろう。このため、AIに関するスキルの取得とともに、新しい働き方に向け従業員のスキルを変えていく必要性が生まれる」とした。その上で、24年3月に買収したオンライン学習プラットフォーム「LearnVantage」について紹介し、グローバルでは3年間で10億ドルを投資する計画だと説明。国内でも同基盤を活用したリスキリングの支援に力を入れる考えだ。
(大畑直悠)