社長兼CEOに昇格する2025年4月1日付人事を発表した。現職の小島啓二社長兼CEOは取締役副会長に就く。徳永氏はエネルギーや鉄道の制御・運用技術(OT)とITの融合を推進してきた実績があり、19年からは渡米して日立ヴァンタラ取締役会長兼CEOとして海外事業をけん引。21年には米GlobalLogic(グローバルロジック)の約1兆円のM&Aを実施している。「デジタルを基軸に持続可能な成長を目指す」(徳永氏)方針だ。
(安藤章司)
徳永俊昭 副社長
社長交代の発表日に開催した説明会で徳永氏は「前社長兼CEOの東原敏昭会長が大胆な事業ポートフォリオの改革を行い、今の小島社長兼CEOがオーガニック成長へとモード変革をして企業価値を大幅に高めた」と、これまでの経緯を踏まえた上で、「デジタルセントリックで持続的な成長を実現していきたい」と抱負を語った。
東原会長の事業ポートフォリオ改革では旧日立化成(現レゾナック)や旧日立金属(現プロテリアル)、日立建機などを連結対象から外し、ITとOTを融合させる今のデジタルを基軸とした事業へと再編。小島社長兼CEOは21年6月に社長に就任してからの約3年間で、M&Aを除いた既存事業ベースの事業成長を軌道に乗せて時価総額を3倍に増やしている。
小島啓二 社長兼CEO
小島社長兼CEOは「本年度までの3カ年中期経営計画の見通しが立ったタイミングで、経営のバトンを引き継ぐ」とし、来年度から始まる次期中計は徳永氏の経営体制で臨むのが適切だとしている。徳永氏はすでに24年4月から次期中計の立案に参画しており、自身が立てた次期中計の内容にそって、「実際にCEOになって実行してもらう」(小島社長兼CEO)段取りだという。
徳永氏の人物像について小島社長兼CEOは、「外国語が堪能で海外の経営トップの方々に対して物おじせず、相手の話すこともよく聞き込む、欠点のないところが欠点」と、海外での交渉力やコミュニケーション力を高く評価している。
また、日立グループのグローバル規模でのデジタルビジネスの転換点となった21年のグローバルロジックのM&Aを推進した徳永氏は、「銀行や投資家から『本当に買収は可能なのか』『うまくいくのか』と問い詰められた。結果的にうまくいったからよかったが、あのギリギリ感は(経験値を高める上で)大きな収穫だった」と当時を振り返る。グローバルロジックのM&Aの成功が追い風となり、日立グループのデジタルビジネスの総称であるLumada事業が順調に拡大。22年度の全社売上高に占めるLumada事業の比率が26%だったのに対して、本年度(25年3月期)は29%まで拡大する見通しを示した上で、「中長期的には(Lumada事業が全社売上高の)過半を占めることを目指す」と意気込む。
次期の中計に関し、引き続きデジタルが軸になるとの認識を強調。「デジタルをコアとして真の『One Hitachi』を実現し、社会イノベーション事業のグローバルリーダーを目指す歩みを加速する」と述べ、▽Lumada事業のさらなる進化▽グローバルでの成長機会の探索強化、▽One Hitachiによる新規事業創出の加速─に取り組むとした。