グーグル・クラウド・ジャパンは4月22日、パートナー事業戦略に関する記者説明会を開催し、パートナーとの協業に一層注力するのに加え、AIやAIエージェントにフォーカスを当てた戦略を展開する方針を明らかにした。パートナーエコシステムの変革や、業界特化の取り組みを強化する「インダストリーファースト」に基づいたパートナーとの連携のほか、AIエージェント同士のやりとりの共通規格である「Agent2Agentプロトコル」へのパートナーの参画を促す姿勢も示した。
(大向琴音)
上野由美 上級執行役員
パートナー事業本部の上野由美・上級執行役員は、「2025年はエンタープライズ領域においてAIエージェントが本格的に浸透する元年になると言われている」と指摘する。同社はこれを踏まえ、パートナーとの連携をより強化し、AIによる変革に対応する姿勢だ。具体的には、パートナーエコシステムの段階的な進化を通じて事業拡大を目指す。
25年度は「Transformation1.0」と位置付け、基盤づくりに取り組む。特定の業界に深い専門知識を持つパートナーと連携し、業界特有のニーズに対応した拡張性の高いソリューションを共同で開発する。
26年度は「Transformation2.0」として、事業拡大と収益性の向上を狙う。業界ごとのソリューションのラインアップ拡充や、重点パートナーとの協業を通じた大規模な販売活動を実施。パートナープログラムも一層強化する。「Transformation3.0」となる27年度は、確立された事業を基盤に持続的な成長を目指す。パートナーとの連携強化を促し、より強固なエコシステムを構築。事業領域の拡大に取り組む。
今後のパートナー戦略のキーワードとするのが、インダストリーファーストだ。▽インダストリーソリューション開発▽パートナー収益性の追求▽イネーブルメント▽パートナーマーケティング▽販売推進ーの五つの重要事項を推進する。パートナーとの共同ビジネスプラン策定も進める。
また、業界特有の課題解決に向け、25年新設したのが「インダストリーソリューション開発部」。パートナーと連携し、製造や金融、小売り、ヘルスケア、ゲーム、通信などをはじめとした業界を対象に、業界の専門性を価値としたAIエージェントで、共通課題に特化したソリューションを開発、推進する部門となる。まずは5人規模から組織をスタートするが、ニーズによって増員も見込む。
4月に米ラスベガスで開催された年次イベント「Google Cloud Next」で発表した、新しいオープンプロトコルの「Agent2Agentプロトコル」についても説明した。エージェント同士のやりとりのオープンな共通規格で、これによりAIエージェント同士がコミュニケーションを取り合って、安全に情報交換し、さまざまな企業のプラットフォームやアプリケーション上でアクションを調整できるようになる。
グローバルでは、米Box(ボックス)や米Salesforce(セールスフォース)、独SAP(エスエーピー)などが参画しており、日本市場においても、パートナー企業の参画を促す。上野上級執行役員は「この変革の時代で志を同じくするパートナーと共に、AIがもたらす新たな未来を創造していきたい」とコメントした。