SB C&SはAI基盤の構築や活用を事前に検証できる施設「C&S AI INNOVATION FACTORY」を開設した。需要が高まるオンプレミスAI開発の技術的ノウハウを物的、人的両面から提供し、パートナーのAI活用を支援する。エンジニア向けのトレーニングを開催するほか、機器の貸し出しも行う。いずれもリモートに対応し、各地のエンジニアの技術力向上を後押しする。AIを軸とした企業間連携も想定。技術検証にとどまらない「新たなAIソリューションを共創する場」を目指す。
(春菜孝明)
榊原 衛 統括部長
AIインフラの構築はクラウド利用の選択肢もある中、オンプレミスに需要が生まれている。機密情報を取り扱う場合のセキュリティー面の安心感や、安定した動作環境への期待が理由に挙がる。一方、開発にはサーバーやネットワークといった機器の知識が必須となり、設計から構築、運用までを担うエンジニアが不足しているとの指摘もある。この課題に対し、ICT事業本部システム基盤推進本部AIインフラ推進統括部の榊原衛・統括部長は「販売店のエンジニアの方々に、オンプレミスのAIインフラ構築の手順を理解していただける場が必要」として、開設に至ったと説明する。
活用場面はエンジニアの技術習得だけでなく幅広い。実機を使ったPoC(概念実証)によりベンチマークが得られることで、顧客への提案の説得力を高める効果が期待される。AI基盤をクラウドからオンプレミスに移行する際の検討材料にもなる。
施設はソフトバンクグループのIDCフロンティアが運営する東京府中データセンター(DC)内に7月10日から置いている。米NVIDIA(エヌビディア)のGPU搭載AIサーバーやAI通信を支えるネットワーク機器、ストレージ装置をそろえる。
具体的には「デモツアー」「ハンズオン」「機器貸し出し」「コラボレーション」の4種類のサービスを展開する。特に、リモートで開発環境の構築を学ぶことができるハンズオンの1段階目の利用が進んでいる。二つの教育トレーニングを追加予定で、最終的には3段階で技術習得が可能になる。機器貸し出しもリモート接続に対応し、テスト環境を提供している。同社と利用企業の間でアウトプットを明確にした上で実施。理論値と実測値の整合性といったパフォーマンスを確認するニーズを想定している。デモツアーでは最新のGPUサーバーを設置した施設内の見学を通じ、開発環境を周知する。
コラボレーションは、施設利用企業同士の連携や協業を同社が促進する。「(当社が)流通という立場でパートナーに販売できればエコシステムをつくっていける」(榊原統括部長)と、ディストリビューターとしての展開力を生かす考えだ。エンジニア同士のリレーションにも期待する。
同社は企業のAI活用を支援する「AIアラウンド戦略」を推進している。榊原統括部長は「『C&S=AI』というイメージを根付かせたい。施設を通じて発信するのは大きな取り組み」と話している。