地理空間データを扱うジオテクノロジーズは11月21日、人流データ活用についてのメディアセミナーを開催した。同社がデータを提供する東京大学空間情報科学研究センターの関本義秀・センター長/教授が、整備に取り組んできた仮想的なデータ「疑似人流」を紹介。GPSといったリアルデータとの融合など商業的価値向上にもポテンシャルが大きいデータだと解説した。
東京大学
関本義秀 センター長
関本センター長は「生成AI時代におけるグローバルな人流生成に向けて」と題して講演。携帯電話の位置情報を基にしたデータは質が高い一方で、一般的には値段が高く、個人情報保護の観点もあり個人の属性情報を取り扱いにくい。使いやすいデータを提供するため、関本センター長らは自治体が鉄道整備などを目的に人の移動を調べてきた「パーソントリップ(PT)調査」に注目。国勢調査といったオープンな統計情報などと合わせ、全国の人流を再現した。携帯電話のデータとも高い相関を持つという。
疑似人流は、地方でコミュニティバスの増便検討などに活用した例がある。自治体の職員らが使いやすいように、システムはWebのUIのみでシミュレーションができるようにした。また生成AIを用いた疑似人流の試作にも取り組み、都市圏ごとのPT調査データを用いてオープンソースのLLMモデルをファインチューニング。「武蔵野市(東京都)に住む40~44歳の男性通勤者の1日の行動を生成する」といった属性をプロンプトとし、属性が同じ100人の行動を出力し多様性やリアリティのある疑似人流を示せたという。
関本センター長は、人流データが認知・活用されるようになったのは比較的最近のことだと指摘し、「人流はそもそも社会のインフラとして大変価値が高い。疑似人流が全国できちんと整備できればシミュレーションもしやすくなり、さまざまな政策決定などに生かせるだろう」と意義を強調した。
(下澤 悠)