豆蔵はAIロボティクス事業を成長ドライバーの一つに位置付け、重点的にビジネスを伸ばす。▽産業用ロボット▽人と協働するロボット▽自動運転や先進運転支援システムの開発支援ーなど、物理世界にAIを応用する「フィジカルAI」分野への進出を加速させる。同社は2025年10月1日付でAIロボティクスに強い旧豆蔵、自動運転や先進運転支援システム開発に強い旧コーワメックスなどグループ計4社を合併させ、より迅速に開発や実装を行える体制に移行している。
フィジカルAIは、視覚(ビジョン)と大規模言語モデル(LLM)、ロボットの制御(アクション)の頭文字をとった「VLA」の開発がかぎを握る。技術開発の一環として、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が実施する「ロボティクス分野におけるソフトウェア開発基盤構築」プロジェクトに、産業技術総合研究所などと共同して参加。27年度までの3カ年プロジェクトを通じて関連技術の開発に取り組む。
左から田中友和・主幹コンサルタント、
大国征司・主幹コンサルタント、本間隆修・執行役員
VLAは人の言葉を理解し、視覚などのセンサーから状況を認識。人の指示通りにリアルタイムで作業を行うAI実装型のロボットを指しており、従来の人が書いたプログラムに沿って動作する産業用ロボットなどとは一線を画す。ただ、現時点では人の指示を動作に反映する際の誤差が大きく「安全性や効率性で実用化は難しい」(大国征司・エンジニアリングソリューション事業部技術コンサルティング部主幹コンサルタント)のが実情だ。
そこで、VLAの完成度が高まるまでの橋渡し的な措置として、LLMにロボットを動かすプログラムを生成させ、そのプログラムに沿って作業させる方法を有望視する。リアルタイム性は損なわれるが「既存の産業用ロボットやサービスロボットを、人の言葉で動かせるようになる利便性が大幅に高まる」(田中友和・エンジニアリングソリューション事業部主幹コンサルタント)ことが期待されている。
自動車業界では自動運転や運転支援システムの内製化が進んでおり、豆蔵は「内製化支援のビジネスに力を入れる」(本間隆修・執行役員第一営業本部本部長)方針。一次下請け部品メーカー(Tier1)が開発するハードと、完成車メーカー(Tier0)が内製化するソフトを分離し、価値の源泉となるソフトやAIを完成車メーカー主導で、かつスピード感を持って開発する体制づくりを支援する「Tier0.5のビジネス」(同)の拡大を目指す。
豆蔵は27年4月からスタートする次期中計では、既存事業の利益成長における平均成長率15%に加え、AIロボティクスや4社合併の相乗効果、AI活用による生産革新などの成長ドライバーで同15%を上乗せし、計30%の利益成長を目標に据えている。
(安藤章司)