【1980年代のIT】業態別代販 政策を追求

三層構造を活かす(第1回)

1981/10/15 16:04

週刊BCN 1981年10月15日vol.1掲載

 コンピュータで代理店販売が本格化し始めたのはここ5、6年である。キャリアとしては浅い。一方、他の産業では20年、30年と代理店販売形態を採り入れているケースは多い。そうしたキャリアを持っている産業がらは学ぶべき点が多い。代理店販売形態を採る場合、メーカーの直面する課題はいくつか考えられる。最大の課題は代理店の組織づくりであり、運営のやり方である。つまり、代理店政策の良し悪しが、そのメーカーのシェアを左右することになる。

 そこで業種業態別にその代理店政策を見ていくことにする。まず複写機を例にとってみよう。複写機メーカーの数は国内外を合せて20社近くある。成長の峠を越した現在でも新規参入メーカーが相次ぐほどだが、国内のシェアは上位3社で市場の80%近くを占めている。複写機のシェアを見る場合、台数とコピーボリュームとの二つの見方があるが、台数シェアでは、リコーがこの数年間にトップになった。

 リコーの販売ルートは三層構造を形成している。

 (1)系列子会社40数社のルート
 (2)卸─文具店ルート
 (3)直販ディーラールート

 この三つが文字通り網の目のように細部にわたって張りめぐらされており、これが販売のリコーといわれるゆえんである。系列子会社ルートは、全国の都道府県にほぼ1社の割合で設立されており、人事はリコーが掌握、子会社間、リコーとの間で異動が行われている。文具店ルートは、リコーから卸商社を経由して文具店・小売店に流通する形をとり、各卸商社はそれぞれ80から120社程度の文具店・小売店をさん下に、ディーラー会を組織している。

 一方、直販ディーラールートでも、東京、関西で独自のディーラー会を組織、リコーディーラー間で競合した場合のディーラートップ同士の話し合いの場としても活用されている。同社の代理店政策のポイントは、各ディーラーに対し腰の低いことである。代理店あってのメーカー、それがリコーの姿勢である。これは松下グループも同じだ。リコーの仕切りが同業他社と比較してディーラーに極端に有利かといえば、必ずしもそうでない。

 また、製品面で他社を圧倒しているかといえば、これも疑問の余地は残る。それでもディーラーがついてくるのは、それ以外の要素があるからといえよう。第一には経営陣がディーラーから信頼を受けている点で、これはとくに系列子会社と直販ディーラーに影響が大きい。企業は人であり、人を動かすのは、動かす人の魅力である。代販組織全体を動かすのも、もちろん人である。

 第二に卸商社1文具・小売店ルートでは、コピーの青焼き時代からのつながりの古さ、強さがあげられる。いわばオールド・ファンを多く持っている強味であろう。第三に商品群である。リコーは複写機としてPPC、EF、ジアソ複写機の3タイプを持つほか輪転謄写機、オフセット、オフィス・コンピュータ、検索機、ワードプロセッサ、ファクシミリから時計、カメラまで持っている。代理店としては、リコー一社との取引きで、OA機器をすべて販売できるということになる。リコーの代販策は、キャリアを持っているだけに細かい。ひと口にリコーのディーラー会といっても、その内容はさまぎまである。

次回はそれについて触れてみたい。
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