Skill upへの挑戦 これからのIT人材育成

<これからのIT人材育成>第2回 NECソフトの人材育成

2002/01/14 20:43

週刊BCN 2002年01月14日vol.924掲載

 第1回のITコーディネータ認定試験で合格者の4%(26人)を獲得したNECソフト。同社は公認会計士や中小企業診断士と同列に論じられることが多いITコンサルタント資格の取得に力を入れている。PMPやCIWといった特定のベンダーに依存しない資格取得にも熱心だ。ターゲットである中小・中堅企業に対し、経営の観点からIT化を図ろうとする同社にとってコンサルタント資格をもつ人材の育成は2002年以降も最重要課題となっている。NECソフトの人材育成・教育プログラムの現状をみる。(谷古宇浩司●取材/文)

中小企業のIT化向けにコンサルタント資格

■上流行程の人材不足

 深刻な不況下にある日本の経済状況において、失業率は5%を突破する過去最悪となっている。しかし、ISVにとってエンジニア不足は逆に深刻な問題となっている。ISV各社は「人が足りない」と口を揃える。

 しかも必要としているのは、人海戦術を展開するための頭数ではない。少数精鋭の強者を心から欲している。NECソフトの福嶋義弘・人材開発部マネージャーは言う。「上流工程を押さえられる人材が圧倒的に足らないと」。

 上流工程とは、顧客企業のシステム開発を経営的な観点からコンサルティングし、効率的かつ効果的な開発の提案を行うことだ。これまで中小・中堅企業の経営に関しては、中小企業診断士の資格をもつコンサルタントなどがアドバイスを行ってきたが、彼らの多くはITの知識や経験に明るくないという現状があった。

 この点を補完し、細かなシステムの開発までをトータルで請負い、開発後のサポートも行うワークフローが構築できれば、ISV各社の未来は明るい。

 外資系コンサルタント企業は大企業をターゲットにこのようなビジネスを展開していたが、中小・中堅企業には予算の関係上、なかなか降りてこなかった。

 その市場を奪い合う争いが2002年以降本格化する。

 ISV各社は上流工程を押さえられる人材を欲するのである。そのような人材を外部からスカウトするのも1つの方法ではあるだろう。しかし、社内の人材をどのように活用していくのか、という問題点も残ってしまう。社内の人的資源を有効に活用し、ビジネスに結びつけていくという観点からすると、社内人材の教育を強化することで、プロフェッショナルの育成を行う方がISVにとっては都合がいいのは確実なのである。

■5つの育成方針

 NECソフトの人材育成方針は、5つの柱で構成される。(1)階層に合わせた教育展開、(2)人材タイプ別育成の鮮明化、(3)技術教育とマネージメント教育の連携、(4)グローバル人材の育成、(5)e-Learningの拡大推進。

 (1)では、若年層、中堅層、経営管理層の3つの階層別に学習風土の定着を目指すものだ。例えば、若年層では必須教育を中心に、中堅層では専門性をさらに伸ばす形での教育などである。(2)では事業戦略に基づいた人材の育成または職務要件に準拠したスペシャリストの養成を目指す。(3)では技術教育と並行した業務教育、例えば財務・会計・経営などの基礎知識の修得を目指す。(4)では語学教育の徹底、(5)は遠隔地に点在するエンジニアへの効率的な学習機会を提供する仕組み作りの推進である。

 これら5つの基本方針に基づき、NECソフトでは人事施策と連携し、職務要件書と連動した教育体系およびキャリアパスモデルを適用している。そのイメージには多くのパターンがあるが、要は、職務要件に必要な技術や知識、経験をあらかじめ想定し、修得に必要な知識や技術、経験を得られる教育プログラムの選択や派遣・出向などを絡めて経験を積ませ、最終的に評価を行う、というやり方だ。評価後、要件が終了すれば、別の職務要件に沿ったキャリアパスが決定されるというサイクルである。

 NECソフトでは入社内定者に「基本情報技術者試験」の準備を通達し、入社後即試験を受けてもらう。この資格がエンジニアとしての最低ラインの資格となる。その後、02年から導入予定の「ジョブシミュレーション」をグループ単位で行い、キャリアプランを作成し、事業部単位で職務要件に沿った教育が行われる。

■上位資格を重視

 認定資格には、マイクロソフトやオラクルなどのベンダー資格取得も含まれる。

 ただし、「初級・中級資格は比較的容易に獲得可能なため、上位資格の取得を推奨している」と福嶋マネージャーは言う。

 ベンダー資格はいわば、製品を取り扱うための免許的な役割をもつものであるという位置づけとなっている。社内に認定センターをもつことで、ベンダーからの製品情報などが入手しやすいという利点もある。

 一方で、CIWやPMP、ITコーディネータといった特定のベンダーに依存しない資格取得は、上流工程を押さえる人材の育成という意味で、最も力を入れている。

 もちろん、これらの資格取得はすべてキャリアパスのイメージに組み込まれて取得するものであるという前提がある。

 NECソフトが年間に割く人材育成の予算は、受講料や講師代などの諸経費を含め、「およそ売上高の1%程度」(福嶋マネージャー)と言う。01年の売上高が約710億円と考えると、およそ7億円強ということになる。ただ、「各社の教育予算に関する算定方法は各社各様なので、一概に比較検討することはできない」(福嶋マネージャー)のも実情だ。
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