The Project

<The Project ―キヤノン IXYデジタル 開発現場の風景―>第6回 10年に一度のヒット機種に

2002/01/14 20:43

週刊BCN 2002年01月14日vol.924掲載

宣伝に中田英寿選手を起用

 宣伝には、サッカーの中田英寿選手を起用した。「若者から年寄りまで知名度が高く、あのクールな雰囲気はIXY DIGITALのもつスタイリッシュさにぴったり」ということからだった。

 テレビはもちろん、あらゆるメディアを活用するメディアミックス戦略も着々と進めていき、最後に残ったのがどのくらいの量産規模でスタートするのかの問題だったという。

 この点についてキヤノン販売の森本一成課長は、「過去の原体験があるから」と言葉少なだが、強気の数字を出してくるキヤノンと控えめなキヤノン販売との間では相当の綱引きがあったようだ。「原体験」という言葉の裏には、流通在庫を抱えて苦しんだ苦い経験のあることが伺われるが、結局月産8万台でスタートすることになった。

4要素うまくかみ合う

 発売したのは2000年5月26日。市場からは大人気をもって迎えられた。

 図はBCNランキングによる2000年1年間のキヤノン製デジカメの販売動向である。

 販売台数については00年1月を100とした指数で表示している。4月まで5%前後だったシェアが5月には11・3%、本格出荷が始まった6月には16.1%にまで跳ね上がった。

 原動力はもちろんIXY DIGITALである。発売直後から売れ筋ナンバーワンに躍り出て、「半年ほどは物不足状態」(森本課長)が続いた。

 IXY DIGITALは「カメラというよりキヤノングループ全体を通じても10年に一度あるかないかの大ヒット作」となったのである。

 大ヒットの要因について森本課長は、「とにかくものが良かった。それが第一の要因。また、価格設定、プロモーション活動、流通対策がうまくかみ合った。IXY DIGITALの場合、価格設定も妥当だったし、中田選手を起用し、テレビ、新聞、雑誌などあらゆるメディアを活用したメディアミックスによるプロモーション活動も大きな効果を上げた。流通についてはプリンタを中心にした家電量販店、カメラ店といった店頭販売ルートにうまく乗せることができた。さらに訪問販売ルートにも乗ったし、カタログなど販促支援作成物を通じてのメッセージもうまく伝わったと思う。要するにすべてがうまくかみ合った」と総括する。
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