実践 新規公開株 投資のポイント

<実践 新規公開株 投資のポイント>9.市場を見るポイント

2002/05/06 16:18

週刊BCN 2002年05月06日vol.939掲載

 株式市場は、東京証券取引所や店頭(ジャスダック)、大阪証券取引所など、多くの取引所と多くの基準によって上場銘柄が構成されている。また、地方の取引所のなかにも、札幌証券取引所がベンチャー向けにつくったアンビシャス市場のほか、名古屋や福岡といった地方の取引所もある。それぞれの市場には特性があるため、新規公開企業への投資判断をする場合、市場は重要な要素のひとつとなる。最も一般的な市場では東証市場がある。上場基準における違いはないものの、企業の時価総額や流動性によって所属部(1、2部)が決まる。

 マザーズを除く東証の場合、時価総額の大きい企業が新規上場(IPO)をするため、資金調達額の多い大型案件となる。これは、株式市場の動向にも影響を受けやすく、初値が暴騰することは少ないが、TOPIXなどのインデックスに連動して運用するファンドなどの買い(組み入れ)期待から株価が上昇するということも起きやすい。ジャスダック市場では、比較的地味な業種でも、業歴が長く経営面では安定している企業などもIPOをしている。時価総額で東証の基準をクリアできないケースが多く、好業績であったとしても投資家に人気がない企業も多くなりがちだ。ベンチャー企業のなかには、経営が安定しているということや、将来的に東証へのIPOを目指すうえで、ジャスダック市場を通過点と位置付けるところもあり、ベンチャー企業とオールドエコノミーと呼ばれる旧来型の企業が混在している市場といえる。このため、ジャスダック市場で投資家が注目するのは、将来、東証を目指すことができるような成長企業になる。

 東証マザーズ市場では最近、IPOの実績が乏しかった。上場企業の一部に問題があったために悪いイメージが定着し、投資家離れが進んでしまったという悪循環に陥ったが、ナスダック・ジャパン市場同様に、起業家の資金調達を応援する市場としての性格から、ベンチャー市場というイメージで定着している。ベンチャー企業の場合は事業内容の新規性が求められるため、事業の先行きに対する期待感が大きく過熱したり冷え込んだりする傾向が強く、株価が乱高下しやすい側面がある。短期の投機目的で資金が流入する傾向が強く、IPOへの投資において最も短期間で大きな利益を生み出す市場になっている。半面、ネット企業の株価が暴落したように、アプローチの難しい市場でもある。その他の地方証券取引所では、売買が成立しないことも多く、流動性の面で課題も多いため、新規公開企業がどの市場に出るのか、といったことは流動性という投資判断において重要なポイントとなる。
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