進化するECビジネス

<進化するECビジネス>エフアイエスジャパン 既存流通を補完し新ルートを創出する水産業界のECサイト

2002/05/20 16:18

週刊BCN 2002年05月20日vol.941掲載

 エフアイエスジャパン(國光保夫社長)は、水産業界向けのECサイト「フィッシュオンライン」を6月中にリニューアルする。同サイトは00年9月にサービスを開始し、受発注、決済、物流をネット上で行っている。これに決済システム機能を充実することで会員数を増やし、取り引きの活性化を図る。従来の決済は、金融ポータルサイトのイー・ギャランティとの提携で与信支援サービスを採用していた。さらにクレジットカード決済やエスクローサービスなども追加する。同社では「フィッシュオンライン」を既存の流通構造を補完し、新しい流通を創出するものとして位置づけている。(佐相彰彦●取材/文)

既存取引と同様の機能が取引活性化を阻む要因に

 今回のサイトリニューアルのきっかけについて、エフアイエスジャパンの國光保夫社長は、「与信機能が逆に取引活性化に歯止めをかけているため」と語る。与信機能は、イーギャランティの与信支援サービスを採用している。「フィッシュオンライン」の会員企業が同サービスを活用するためには、与信審査を受けることが必須。國光社長は、「その与信を受けている間に会員になることを止めてしまう企業が多かった」という。

 会員になるためにイーギャランティの与信機能を活用しなければならないという仕組みが会員数の伸び悩みの要因の1つとなっていたのだ。フィッシュオンラインでは、サイトで受発注、決済、物流の手続きなど、既存の取り引きと同様の機能を提供していることが特徴だ。売買契約後の配送は、ニチレイ、NTTデータ、伊藤忠の3社出資で設立したロジスティクス・プランナーが担当する。買い手は、サイトで売り手の商品を検索することが可能で、取り引きを行うには、会員登録が必要となっている。登録後に価格を提示する。

 國光社長は、「サイトで取り引きが完結することが活性化につながるとは限らない。直接会って交渉することや、電話・FAXで注文することは重要なことでもある。そのため、サイトで完結する機能を多彩に盛り込み、会員登録してから会員になるまで時間がかかるBtoBより、既存の取り引きで十分だと考える企業が多かったのではないか」と分析する。同社は、決済機能にクレジットカード決済やエスクローサービスなどを6月中に追加する計画。会員登録についても、イーギャランティの与信支援サービスを受けなければ会員登録できないという仕組みを変更する。また、会員が決済機能を自由に選択できる仕組みに切り替える。國光社長は、「気軽に使えるeマーケットプレイスでなければ、会員が集まらない」と強調する。

サービス開始は01年9月先手必勝で立ち上げる

 同社が「フィッシュオンライン」の運営を開始したのは01年9月。サービス開始にあたり、ニチレイや日本水産、大阪魚市場、千代田水産、中央魚類、松田産業、三菱商事などが資本参加した。売り手は、資本参加した同7社をはじめとする国内外の加工食品メーカーや漁業者などが対象。買い手は、中小加工メーカーや飲食店のほか、ホテルや旅館、スーパーなど。サイトは、大口の取り引きに加え、小口取引にも対応しているため、個人経営者の参加が可能だ。

 サイトを立ち上げた背景は、「水産業界に特化したサイトがなかったため。先手必勝という感覚で立ち上げた」と当時を振り返る。大手加工メーカーが資本参加した理由は、「eマーケットプレイスで流通構造を変える仕組みをつくりたかった」という。売り手はサイト上に店舗を設けるか、同社がサイト上で提供している「国内商品モール」のなかに商品を掲載する。買い手は、豊富な商品を24時間いつでも検索できる。利用価格は、取り引きが成立した場合に仲介手数料を同社に支払う成功報酬型となっている。仲介手数料は、与信支援サービス料も含め8%が基本だ。買い手の利用料は1万円(年間)。1年間で200万円以上の取り引きがあった場合は、翌年は無料になる。

 eマーケットプレイスについて、國光社長は、「現在は、既存の流通でカバーできないマーケットを創出し、通常の取り引きを補完するもの。既存の流通ルートを壊してまで『フィッシュオンライン』を活用するのでなく、業務効率化の手段として既存の流通構造と融合することがeマーケットプレイスのあり方だ」と位置づけている。「これまで取り引きがなかった顧客を開拓できることや、売り手の取扱商品を理解できることがメリット。オンライン・オフラインに限らず取り引きは成立する」また、eマーケットプレイスが海外企業の日本市場参入にもつながるとみている。

 同社が水産業界向けに提供している「FISネット」では、日本をはじめ、米国や欧州、アジア地域などといったところからアクセスがある。サイトをアクセスするユーザー数は、1日平均で9000人。与信機能を受けなければ会員登録できない仕組みを変えたのは、同ユーザーを会員として獲得するためでもある。國光社長は、「『フィッシュオンライン』は、まだノウハウを蓄積する段階」と話す。現在は、既存の流通を補完するものとして位置づけているが、インターネットでの取り引きが盛んになり、流通構造が進化した時でも迅速に対応できるサイトを構築することを視野に入れる。昨年度(01年12月期)は、赤字を計上した。「03年度までには単年度黒字を目指す」と闘志を燃やす。
  • 1

外部リンク

エフアイエスジャパンhttp://www.fishonline.jp/