実践 新規公開株 投資のポイント

<実践 新規公開株 投資のポイント>13.売上高と利益の変化を読む

2002/06/03 16:18

週刊BCN 2002年06月03日vol.943掲載

 企業を見分けるうえで最もベーシックな観点は業績動向だが、そのなかでも投資判断として注目するのは売上高と利益の変化を読むことにある。通常の財務諸表では、利益は3つの項目から成り立っている。まずは営業利益。これは、売上高から原価を差し引いたもので、例えば小売業を営む企業が一定期間内における商品の売上高から、仕入れ代金を差し引いたもの。ビジネスそのものが上げている総利益ということになる。営業利益が赤字の場合は、仕入れ値よりも安く販売するようなときに起き、ビジネスそのものが成り立っていないことを意味する。ネットバブルと呼ばれたころの赤字企業の多くが同様のケースだった。営業利益率が高いほど、企業の収益基盤は安定している。

 営業利益から人件費や企業運営に必要なその他の経費を差し引いた利益が経常利益となる。この利益は、ビジネスが生み出した利益というよりは、企業が生み出した利益と考えられる。営業利益を極力減らさないための規模に見合った社員数や事務コストであれば、企業の収益性は高く評価される。投資の世界では経常利益も重要なポイント。株価にインパクトを与える利益が3つめの当期利益。これは、「最終利益」や「純利益」と呼ばれ、経常利益から、企業が抱える特別損失や特別利益を差し引き、法人税を収めたあとの利益となる。企業決算の発表で、例えば「売上高は減少したものの、リストラ効果によって経常利益は増収となり、株式の売却損を特別損失に計上したため、最終利益は赤字に転落」といった内容を、それぞれの利益に当てはめてみると分かりやすい。

 企業の投資判断をする順序として、まずそのビジネスが利益を生み出すものかどうかを営業利益で確認し、営業利益率が小売なら30%以上、卸売りなら20%前後、サービス業ならもっと高い利益率が必要となるように、業種や業態に合った利益率をチェックする。そのうえで、経常利益の増減とその要因を把握する。特別利益、特別損失は企業本来のビジネスではない要因が多いため、内容の吟味が大切だ。株価は今期見通しや来期見通しを織り込んだ動きをするため、単に増収増益だとか、減収増益といっても、その中身を知ることによって思わぬリスク要因を発見することがある。事業内容の詳細というのは、第三者には分かりにくいが、似たような業種の企業との比較などを通じて、収益から企業を判断することができる。株式投資において最も大きなリスクは倒産である。それを回避するためにも、企業の財務諸表(決算)の読み方は必要不可欠だ。
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