視点

著作物の適切な流通

2002/09/09 16:41

週刊BCN 2002年09月09日vol.956掲載

 著作権法は、デジタル化とネットワーク化時代に対応するため、1-2年ごとに改正を重ねている大変アクティブな法律である。その著作権法制度について検討する国の機関が「文化審議会著作権分科会」である。この分科会のミッションは、文部科学大臣または文化庁長官の諮問に応じて著作権法制度に関わる重要事項を調査審議し、文部科学大臣または文化庁長官に意見を述べることである。検討作業はいくつかの課題に応じた小委員会が設置されて行われる。

 さて、今年5月から新しい「文化審議会著作権分科会」の小委員会が5つスタートした。「法制問題小委員会」、「契約・流通小委員会」、「国際小委員会」、「著作権教育小委員会」、「司法救済制度小委員会」である。「契約・流通」「著作権教育」「国際」など、今までにないテーマで小委員会が設置されたことが注目される。「国際小委員会」では、国際ルールづくりやアジア地域での海賊版対策などを検討することになっており、さっそく8月26日北京で「日中著作権シンポジウム」が開催され、文化庁から文化庁長官官房審議官と国際課の担当官の合計2名と私が招聘され、「ソフトウェアの権利侵害状況とその対策」についてスピーチを行った。一方新聞などでも報道されたのでご存じの方も多いと思うが、8月2日「コンテンツ海外流通促進機構」が設置された。これは、アジア地域で海賊版として流通している音楽、アニメ、とりわけ被害の大きいゲームソフトなどのコンテンツが適切に流通するように、権利侵害に対して具体的な対策を行うことを目的としている。

 「司法救済制度小委員会」では「法定賠償制度」「三倍賠償制度」「間接侵害規定」等幅広く検討していく。これらの救済制度について検討されることで、ネットワークや企業内違法コピーなどでの侵害行為に対して損害賠償請求がやりやすくなる見通しだ。また「契約・流通小委員会」は、著作物流通促進の観点から使いやすい契約システムを検討するものだ。一方、文化庁著作権課はこの7月1日に「著作物流通推進室」を設置し、コンテンツビジネス支援に乗り出す意気込みである。コンテンツ産業を側面から支える流れが確実に起こりつつある状況をとらえ、競争力のある質の高い著作物がたくさん創作される社会になるよう、当協会ではすべての小委員会で積極的に発言していく。
 
一般社団法人 コンピュータソフトウェア 著作権協会 専務理事 久保田 裕
久保田 裕(くぼた ゆたか)
 1956年生まれ。山口大学特命教授。文化審議会著作権分科会臨時委員、同分科会国際小委員会専門委員、特定非営利活動法人全国視覚障害者情報提供施設協会理事、(株)サーティファイ著作権検定委員会委員長、特定非営利活動法人ブロードバンドスクール協会情報モラル担当理事などを務める。主な著書に「情報モラル宣言」(ダイヤモンド社)、「人生を棒に振る スマホ・ネットトラブル」(共著、双葉社)がある。
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