サイバーテロへの備え

<サイバーテロへの備え>最終回 もはや「自己責任」ではない

2002/09/30 16:18

週刊BCN 2002年09月30日vol.959掲載

 1960年代に米国でARPANETとして始まったインターネットですが、軍事目的のみならず、研究者や学生の情報交換の手段として、その献身的なボランティア活動によって広がってきました。その後、商業目的の利用が解禁され、インターネットサービスプロバイダの誕生によって一般にも広く利用されてきているというのはご承知のとおりです。

 その成り立ちの経緯から、インターネットの世界では、なかったら自分で作る、わからなかったら自分で調べるという、いわゆる「自己責任の原則」が根強く残っています。これは、前回まで繰り返し述べてきたように、インターネット上の情報の無保証性や、わが身は自分で守る、ということにつながっているのは理解していただけると思います。

 しかし、ここまで利用が広がって、すでに通常のメディアとしての性格を持ち始めた現在、この「自己責任」ということだけでは済まされなくなりつつあります。インターネット、それ自身の安全性を確保するために、サーバー管理者のみならず、ユーザー1人ひとりがセキュリティに関心をもち、必要な対策をとる必要があるのです。

 管理の不十分なサーバーをインターネットに接続していれば、例えばSPAMメールの発信に悪用されたり、踏み台として他者への攻撃に悪用されたり、他のネット利用者に迷惑をかける元になりますし、ウイルス対策の不十分なパソコンでネットを利用することで、それとは知らないうちに他の利用者へウイルスをばら撒く元になってしまったり。インターネットの利用者のほんの一部がそれらの対策を怠ることによって、ネット利用者全体に迷惑をかけ得るのです。

 誰でもできるセキュリティというサブタイトルで続けてきたこの連載ですが、実は「誰でもできる」ことを、「誰もが」やらなければならないということを認識してください。セキュリティパッチの適用や、ワクチンソフトのファイル更新、自分のパソコンの設定の確認など、最近では自動的に行ってくれるようになっているものもあります。とはいえ、機械任せにせず、自分の責任で自分のパソコンのセキュリティ対策を行うことで、まずは自分自身を守るということ。それが、結局は他のインターネット利用者や、インターネット全体のセキュリティを高め、安全なネットワーク環境をつくり、サイバーテロやその他のハイテク犯罪を防いでいくことにもつながるのです。(警察庁情報通信局技術対策課 課長補佐 野本靖之)
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